50代の方はそろそろ老後が視野に入ってくる頃で、老後のお金について気にしている方も多いと思います。
老後のお金に関してはいくつもの統計資料があります。
今回ご紹介をするのは金融広報中央委員会が調査し公表をしている2019年(令和元年)の「家計の金融行動に関する世論調査」です。
家計の金融行動に関する世論調査では様々な視点で調査が行われていますが、この記事では50代単身の方に関する統計資料の一部をご紹介していきます。
なお統計資料は「単身世帯」と「二人以上世帯」に分かれていますが、この記事では50代単身世帯についてご紹介していきます。
※ 金融広報中央委員会の事務局は日本銀行情報サービス局に置かれていて、中立・公正な立場から金融に関する広報活動を行うことを目的にしています。
※ 家計の金融行動に関する世論調査は平成19年以降毎年行われているもので、家計状況を把握するとともに金融知識を身につけることの大切さを広報することなどを目的にしています。
※ 調査項目は71の資料にまとめられています。この記事ではその中で主だった12の項目についてご紹介をします。
50代単身世帯の収入と貯蓄
1 年間手取り収入(税引後)
収入 | 割合(%) |
収入はない | 9.1 |
300万円未満 | 50.9 |
300万円以上500万円未満 | 23.3 |
500万円以上750万円未満 | 10.9 |
750万円以上1000万円未満 | 3.8 |
1000万円以上1200万円未満 | 0.8 |
1200万円以上 | 1.0 |
無回答 | 0.3 |
平均値 | 283万円 |
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中央値 | 230万円 |
税引き後の手取り収入とはいえ、300万円未満の方が全体の60%を占めています。そのため、平均値も中央値も300万円に満たない数字になっています。
50代の方にとって将来を考えると、年収が上がるよりも下がる確率の方が高くなります。収入を如何に維持していくのかも、50代の方にとって重要な課題になってきます。
平均値と中央値の例
5人の学生がテストを受け、結果が30点、40点、50点、80点、100点だったとした場合
平均値
(30点+40点+50点+80点+100)÷5=60点
中央値
点数を小さい順(又は大きい順)に並べて真ん中に来る値
30点、40点、50点、80点、100点 ⇒ 小さい順(又は大きい順)に並べて真ん中に来る50点が中央値
2 年間手取り収入(臨時収入を含む)からの貯蓄割合(「金融資産を保有していない」を除く)
貯蓄割合 | 割合(%) |
貯蓄しなかった | 43.1 |
5%未満 | 5.2 |
5%以上10%未満 | 12.1 |
10%以上15%未満 | 14.5 |
15%以上20%未満 | 2.4 |
20%以上25%未満 | 9.3 |
25%以上30%未満 | 1.2 |
30%以上35%未満 | 6.9 |
35%以上 | 5.2 |
平均 | 10 |
年間手取り収入が低ければ、貯蓄を行うのも厳しくなります。貯蓄割合10%未満が全体の60%になるのも仕方のないことかもしれません。
ただ、貯蓄は老後を考える上では大切なのも事実です。できれば平均である10%の貯蓄は目指していきたいところです。
50代単身世帯の金融資産
3 金融資産保有額
金融資産保有額 | 割合(%) |
保有していない | 37.2 |
100万円未満 | 13.4 |
100万円以上200万円未満 | 6.8 |
200万円以上300万円未満 | 5.1 |
300万円以上400万円未満 | 3.8 |
400万円以上500万円未満 | 1.8 |
500万円以上700万円未満 | 3.5 |
700万円以上1000万円未満 | 3.8 |
1000万円以上1500万円未満 | 5.8 |
1500万円以上2000万円未満 | 2.8 |
2000万円以上3000万円未満 | 5.1 |
3000万円以上 | 8.6 |
無回答 | 2.3 |
平均値 | 926万円 |
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中央値 | 54万円 |
この結果で特に注目したいのは「保有していない」が37.2%もあることです。また保有していないと100万円未満を足すと50%にもなります。
1000万円以上保有する方も全体の20%を超えるので、平均値こそ高くなりますが、中央値は54万円。
50代の単身の方は、金融資産をほとんど保有していない人が多いというのが実情です。
4 種類別金融商品保有額(「金融資産を保有していない」を除く)
預貯金 | 597万円 |
生命保険 | 150万円 |
損害保険 | 7万円 |
個人年金保険 | 136万円 |
債券 | 43万円 |
株式 | 308万円 |
投資信託 | 206万円 |
財形貯蓄 | 13万円 |
その他 | 35万円 |
合計 | 1496万円 |
金融資産を保有していない方を除いているので、合計額は約1500万円と大きくなります。
仮に債券・株式・投資信託をリスクのある資産とすると、合計額は557万円で構成比は約37%。
一方、それ以外の安全資産の合計額は938万円で構成比は約63%。
昨今は、iDeCoやNISAなどで投資環境が整備されているものの、まだまだ安全資産の保有割合が高いことが伺えます。
もっとも老後が視野に入ってきて、老後のお金の準備が必要になってくる50代という世代を考えると、この構成比は妥当なようにも思われます。
5 金融資産の保有目的(「金融資産を保有していない」を除く)(3つまでの複数回答)
項目 | 割合(%) |
病気・災害への備え | 42.7 |
子どもの教育資金 | 0.8 |
子どもの結婚資金 | 1.2 |
住宅取得・増改築 | 5.6 |
老後の生活資金 | 67.3 |
耐久消費財の購入 | 9.3 |
旅行・レジャー資金 | 14.1 |
納税資金 | 3.6 |
遺産として残す | 1.2 |
特に目的はない | 14.5 |
その他 | 14.5 |
50代単身世帯の方の金融資産の保有目的は、老後の生活資金と病気・災害への備えです。
老後の生活資金と病気・災害への備えをしたうえで、旅行・レジャー資金などを考えるというのが、この世代の方の特徴と言えそうです。
6 金融資産目標残高
金額 | 割合(%) |
200万円未満 | 12.9 |
200万円以上300万円未満 | 1.3 |
300万円以上500万円未満 | 4.1 |
500万円以上700万円未満 | 10.1 |
700万円以上1000万円未満 | 1.0 |
1000万円以上1500万円未満 | 13.2 |
1500万円以上2000万円未満 | 1.8 |
2000万円以上3000万円未満 | 9.1 |
3000万円以上5000万円未満 | 8.6 |
5000万円以上7000万円未満 | 5.6 |
7000万円以上 | 7.3 |
無回答 | 25.1 |
平均値 | 2479万円 |
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中央値 | 1000万円 |
目標に関する質問なので、実態よりも大きな金額がでてきます。ただ平均値は約2500万円と高いものの、中央値は1000万円。
実態よりは高いように見受けられるものの、目標設定額としては妥当のようにも思われます。
上記の表でいえば、1000万円以上1500万円未満を目指したいところです。
50代単身世帯の借入金
7 借入金の有無
項目 | 割合(%) |
借入金がある | 20.5 |
借入金がない | 79.5 |
借入金がないが約80%。
借入金がないのが望ましいのは言うまでもないことで、多くの方が健全な生活を営んでいることが推察されます。
8 借入金残高(借入金がある世帯)
金額 | 割合(%) |
50万円未満 | 27.2 |
50万円以上100万円未満 | 7.4 |
100万円以上200万円未満 | 14.8 |
200万円以上300万円未満 | 8.6 |
300万円以上500万円未満 | 12.3 |
500万円以上700万円未満 | 2.5 |
700万円以上1000万円未満 | 2.5 |
1000万円以上1500万円未満 | 7.4 |
1500万円以上2000万円未満 | 6.2 |
2000万円以上 | 6.2 |
無回答 | 4.9 |
平均値 | 493万円 |
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中央値 | 150万円 |
借入金には住宅ローンなど多額なものも含まれているので、結果の幅が広くなっています。
借入金が1000万円以上ある方は、全体の約20%。借入金の多さは老後生活を制約する可能性が高くなるので、できれば早期の対策を考えたいところです。
50代単身世帯が考える老後の生活
9 老後の生活についての考え方
項目 | 割合(%) |
それほど心配していない | 16.2 |
多少心配である | 26.8 |
非常に心配である | 57.0 |
老後の生活については、お金だけでなく健康など様々な不安がでてきます。
全体を通してのことですが、10人中8人から9人の方が老後生活に対する心配があるのは、やはり数字としては大きなものです。
老後の生活に対する不安は、不安の一つ一つに対してできる限りの対策を講じていくのが大切と言えそうです。
10 生活設計策定の有無
項目 | 割合(%) |
生活設計を立てている | 24.3 |
現在は立てていないが今後は立てるつもり | 42.8 |
現在は立てていないし今後も立てるつもりはない | 32.9 |
「人生100年時代」と言われ、老後生活の長さを多くの人が認識し、さらには老後の生活を心配している方が多いにも関わらず、生活設計を立てている人が4人に1人というのは少ないようにも思われます。
生活設計を立てていない理由としては、立てる必要がないというよりも、立てる方法が分からない、あるいは立てるのが面倒であるとお考えの方が多いものと推察されます。
しかし、生活設計の立て方はレベルがあります。
ごく簡単に生活設計を立てる方もいれば、かなり綿密に立てる方もいます。生活設計を立てることは決して無駄にはなりません。
最初はごく簡単かつ大雑把で良いので、生活設計を考えることをおすすめします。
11 老後のひと月当たり最低生活費・年金支給時に最低準備しておく金融資産残高
項目 | 金額 |
老後の1ヶ月当り最低予想生活費 | 25万円 |
年金支給時に最低準備しておく金融資産 | 2074万円 |
老後の1ヶ月当り最低予想生活費25万円は、他の統計でも似たような数字が出てきます。
人によって状況は大きく違うものの、1ヶ月25万円は一つの目安になりそうです。
また、年金支給時に最低準備しておく金融資産2074万円は他の質問の結果と比べると幾分多いようにも思われますが、これは老後2000万円問題の影響があるのかもしれません。
12 老後における生活資金源(3つまでの複数回答)
項目 | 割合(%) |
就業による収入 | 52.4 |
公的年金 | 61.0 |
企業年金・個人年金・保険金 | 26.3 |
金融資産の取り崩し | 25.1 |
利子・配当 | 6.3 |
不動産収入 | 2.0 |
こどもなどからの援助 | 0.0 |
公的援助 | 14.2 |
その他 | 13.9 |
老後における生活資金源に関して、とりわけ注目すべきは「就業による収入」です。
生活資金源の1位は「公的年金」であるものの、年金の給付削減や老後の長期化を考えると、就業による収入を求める割合は今後も高くなりそうです。
50代の方にとっては、特に何歳まで働くかが今後の重要な課題となりそうです。
まとめ
この記事では、金融広報中央委員会が調査し公表をしている2019年(令和元年)の「家計の金融行動に関する世論調査」から、50代単身の方に関する統計資料のご紹介を行ってきました。
具体的には、全体で71の統計資料を、大きく4つの項目に分け12の統計資料のご紹介をしてきました。
今回ご紹介をした中でも、お金に関する統計資料は結果の幅が広いことが特徴で、平均値は場合によっては多くの方の実情と乖離している可能性もあります。
しかし中央値は実情により近いので、理解もしやすく参考にもできるのではないでしょうか。
50代の方は安心の老後を過ごすため、この記事を参考になさっていただければ幸いです。