このサイトは「50歳台で考える老後のお金」で、主に50代の方を対象に様々な記事を書いています。
また、私は年金やライフプラン相談を仕事にしていますが、そこでのお客様も50代の方が中心です。
ところで、今回は「学生納付特例制度とは!追納すべきかについてもお伝えします」で、若い世代の方をテーマにしています。
どうしてでしょうか。
実際、私が対応されるお客様は50代の方で、内容は老後の年金やライフプランに関するご相談です。
ただ相談を承っていると、お客様のお子様の話に及ぶことがあります。
50代のお子様といえば20歳前後。
そこで寄せられるご質問は、20歳前であれば「20歳になったら国民年金保険料を支払うべきか」。
20歳を過ぎている方であれば「学生納付特例制度を利用しているが、将来は追納すべきか」。
相談の形は様々ですが、まとめるとこんな感じになります。
50代の方は自分の老後のことだけでなく、お子様のことが心配になる世代で、まだまだ教育費の支払いが続いていることも多いようです。
この記事では、学生納付特例のあらましをご紹介した後に、お客様のご質問に対して実際に私が回答していることをお伝えしていきます。
なお、学生納付特例制度の細かな部分については「日本年金機構のHP」をご覧になってください。
学生納付特例とは
公的年金は大きく分けて国民年金と厚生年金があります。
たとえば、中学校や高校を卒業して就職する方がいます。この方々が加入するのは厚生年金です。
一方、高校を卒業して進学した方は20歳になったら国民年金に入ります。
50代の方は「学生は20歳になっても国民年金は任意加入」と思われるかもしれません。
確かにそのとおりで平成3年3月までの学生は、20歳になっても国民年金には任意加入でした。
しかし平成3年4月以降、厚生年金に加入していない人は20歳になったら国民年金に強制加入になっています。
もっとも学生の場合、所得のない方が多いということで、強制加入だけど申請することで学生納付特例という制度を利用することができるようになっています。
なお、進学をしない方もいます。
学生でなければ学生納付特例を利用することはできませんが、学生でなくても所得が一定額以下の場合は50歳未満を対象にした「納付猶予」の仕組みがあります。
学生納付特例と50歳未満の納付猶予は異なる部分があるものの、概ね同じ仕組みで作られています。
猶予と免除の違い
国民年金保険料は所得に関わらず定額なので、支払いが厳しい方も相当数います。そんな方のために設けられている制度に、猶予や免除があります。
学生納付特例や、50歳未満を対象にした納付猶予は何れも猶予の制度です。
では、猶予制度と免除制度はどこが違うのでしょうか。
もちろん、猶予と免除では認定の基準が異なるわけですが、ここでは効果の違いについてお伝えをしていきます。
まず猶予の考え方は「今は国民年金保険料を支払わなくてもいいよ。でも、後で支払ってね。」です。
猶予制度は文字通り、国民年金保険料の支払いを猶予する仕組みです。
一方、免除は「今は国民年金保険料を支払わなくてもいいよ。でも、後で支払うこともできるよ。」です。
猶予制度も免除制度も承認を受けます。この点が、単純に国民年金保険料の支払いをしない「未納」とは決定的に異なります。
ただ、猶予は「後で支払ってね」であるのに対して、免除は「後で支払うこともできるよ」という点で違いがあります。
ところで、国民年金を支払って受け取れるのは老齢基礎年金です。
老齢基礎年金は、第1段階として受給資格期間の確認があり、受給資格期間を満たした人に対してだけ65歳から老齢基礎年金が支給されます。
第1段階の受給資格期間については、昔は25年でしたが、今は10年で受給資格ができるので、無年金になってしまう可能性はかなり低くなっています。
それでも9年11月では老齢基礎年金の受給資格はできません。
では、ここで猶予と免除の効果の違いをお伝えします。
猶予は承認を受けているので10年の受給資格に加えることはできます。ただし「後で支払ってね」という考え方があるので、老齢基礎年金の計算対象にはなりません。
一方、免除も承認を受けているので10年の受給資格に加えることはできます。
さらに「後で支払うこともできるよ」という考え方なので、国民年金保険料を支払った方よりも少なくなるものの老齢基礎年金の計算対象にもなります。
以上、まとめると次のようになります。
受給資格期間 | 老齢基礎年金額 | |
未納 | 入らない | 計算しない |
猶予 | 入る | 計算しない |
免除 | 入る | 計算する |
ここではっきりとするのは、未納だけは避けたいということです。
次に猶予と免除は、どちらが有利かというと免除ですが、学生納付特例を使える場合は免除制度は使えないというルールがあります。
したがって、猶予と免除は任意に選ぶことはできません。
なお、猶予も免除も後で納付をすることができます。これを追納と言っています。
ただ、追納はあくまでも任意で行うものです。猶予は「後で支払ってね」という制度ですが、仮に追納をしなくても未納になってしまうことはありません。
それでは、次に追納の仕組みについてご案内をします。
追納の仕組み
猶予も免除も10年以内であれば追納をすることができます。
追納は任意の制度ですが、追納すれば老齢基礎年金の額は増えるので、可能であれば追納を検討する価値はあります。
ただし、追納にはいくつかのルールがあります。
まず、追納は古いものからしていくということで、追納をしたい時期を任意で選択することはできません。
また、猶予を受けた年から3年度以上経過すると、当時の国民年金保険料に加算額が加わります。
追納したいという気持ちがあっても、時間が経過すると支払額も相当に増えてしまいます。したがって、追納はできるだけ早い時期に検討することがおすすめです。
それでは、50代のお客様から寄せられるご質問に対しての、私の回答をご紹介します。もちろん、私の回答が絶対的な正解ということはありません。
ただ、ヒントにしていただければ幸いです。
事例1 20歳になったら国民年金保険料を支払うべきか
このご質問は、お子様が20歳前の場合に多いご質問です。
このご質問に対して、私の回答は「どちらでも良いのでは」というとてもシンプルなものになります。
まず、国民年金保険料を納付すると1年間で約20万円になります。20万支払うことで受けるメリットは、
1 お子様の老齢基礎年金の金額計算の対象になる
2 親御さんがお子様の国民年金保険料を支払っていれば「社会保険料控除」が使え所得税・住民税の節税効果が見込める。
一方、デメリットとしては
1 1年間20万円のコストがかかるので、普段の生活で節約が必要になる可能性がある。
2 仮に老齢基礎年金が今まで通り65歳支給開始だとしても、20歳のお子様が受け取るのは半世紀近く先の話になってしまう。
この場合、特に気になるのは、メリットとしては節税効果、デメリットとしては節約が必要になるではないでしょうか。
したがって、普段の生活に相当余裕があり、お子様の国民年金保険料の支払いが苦にならない。
また、もうしばらくはお子様に積極的に関わっていきたいという方には、お子様の国民年金保険料の支払いをすすめます。
一方、お子様の国民年金保険料を支払うと節約を考えなければいけない。
また、もう成人なのだから自分のことは自分でさせたいという方には、学生納付特例の利用をおすすめします。
私が、このご質問を受けたときは上記のメリット・デメリットをお伝えした後に、「どちらでも良いのでは」という回答をしています。
統計を取ったわけではありませんが、10人のお客様がいた場合、7~8人が学生納付特例を利用するという結論になっているように見受けられます。
事例2 学生納付特例制度を利用しているが将来は追納すべきか
事例1と同じく、こちらも私の回答は「どちらでも良いのでは」になります。
ただ追納するのであれば、お子様の意思に基づいて、お子様自身に納付をしてもらうのが好ましいのではないでしょうかと付け加えることが多いと思います。
まず追納は任意の制度なので、する・しないは自由ですし、追納をしなくても未納になるわけではありません。
また、学生納付特例は20歳になってできるもので、追納を考えるのはお子様自身が20歳をある程度過ぎた年齢になっています。
もちろん親御さんが追納するのをおとめすることは決してありませんが、「私だったら」という前提で、追納をするのであれば「お子様自身にしていただくべき」とお答えしています。
この追納に関するご質問もたまにありますが、追納をしたいというよりも「追納をしないと何かペナルティはあるのでは」と心配をされる方が多いように思われます。
追納は任意だということと、追納しなくても未納になってしまうことはないとお伝えすると、50代のお客様のほとんどは安心されます。
こちらについても統計を取ったわけではありませんが、10人のお客様がいた場合、9人が追納はしないという結論になっているように見受けられます。
まとめ
この記事では「学生納付特例制度とは!追納すべきかについてもお伝えします」をテーマにお伝えをしてきました。
まず何よりも避けたいのは未納です。
未納は老齢基礎年金の受給資格期間に入らないし、最悪の場合、老齢基礎年金が受けられなくなる可能性があります。
また、この記事では触れませんでしたが、公的年金は老齢だけでなく障害や遺族の給付もあります。
たとえば障害の場合、障害の程度が一定以上であることが条件ですが、保険料納付要件というのもあります。
どんなに障害が重篤でも保険料の納付要件を満たしていないと、障害の年金は支給されないというものです。
未納は保険料納付要件には該当しません。
一方、学生納付特例は承認を受けているので、追納をしなくても保険料納付要件の月数に算入されます。
20歳になったら国民年金は強制加入になります。
支払いが厳しいという方は未納にするのではなく、学生納付特例あるいは50歳未満の方を対象にした納付猶予の制度をお使いいただくことをおすすめします。
50代の方が年金相談に訪れるのは、自分自身のことを知りたいためで、ある程度の知識を持っている方も多いようです。
ただお子様の世代のことになると、50代の方の20歳の頃とは制度が変わっているので、あまり知識がない方も多いように見受けられます。
あくまでもご質問があった場合という前提ですが、お子様の学生納付特例の話をすると、何かすっきりとした感じでお帰りになる姿がとても印象的です。