積立NISAは、日本にある約6000本の投資信託から、金融庁が認めた約180本を各金融機関が販売する仕組みです。
また、普通の投資信託とは異なり収益分配金などに対する税を非課税にするなど、税制面での優遇措置も設けられています。
積立NISAは良い制度であることは間違いないもののデメリットもあります。この記事では、積立NISAで考えられるデメリットを8つにまとめてご紹介していきます。
積立NISAの利用を考えている方の参考になれば幸いです。
目次
積立NISAのデメリット1 短期投資には向かない
積立NISAで選定されているのは投資信託ですが、投資信託は長期投資には向いているが、短期投資には向かない金融商品と言われています。
短期投資を考えている方に積立NISAは不向きかもしれません。
積立NISAのデメリット2 元本保証されてない
積立NISAで選定されているのは投資信託です。
投資信託は預貯金とは異なり元本保証がないので、運用によっては損失を発生させる可能性があります。
投資信託は株式投資などと比べるとリスクもリターンも少ないのが一般的ですが、どうしても損をしたくない方は、投資信託も積立NISAも不向きかもしれません。
積立NISAのデメリット3 運用商品が限られている
日本で販売されている投資信託約6000本のうち、積立NISAで購入できるのは約180本。割合にして約3%で相当に絞られています。
また、積立NISAを取り扱うのは金融機関や証券会社ですが、それぞれが約180本の投資信託を扱っているわけでもありません。
たとえば、A銀行は12本、B証券会社は9本と、実際はさらに取扱い本数が絞られています。
商品数を絞ることは決して悪いことばかりではありませんが、投資信託に知識があり、どのようなものを購入したいのかにこだわりがある方にとっては、大きなデメリットになりそうです。
積立NISAのデメリット4 口座開設は1つだけ
今、ご紹介した通り積立NISAを取り扱うのは金融機関や証券会社です。
一方、積立NISAは1年間で40万円と投資金額の制約があります。
金額がそれほど高くないことと、1年間で40万円という金額をしっかりと管理するため、積立NISAの口座を開設できるのは1か所のみとなっています。
なお、積立NISA口座の金融機関を変更することは可能ですが、変更前の口座から変更後の口座への振り替えはできません。
積立NISAのデメリット5 一般NISAと併用できない
NIsaは、一般NISA・積立NISA・ジュニアNISAの3種類あります。
このうち20歳以上の方が加入できるのは一般NISAと積立NISAですが、一般NISAと積立NISAは併用することができず何れか一つの加入になります。
一般NISAと積立NISAの主な違い
一般NISA | 積立NISA | |
非課税となる投資枠 | 年額120万円 | 年額40万円 |
非課税となる期間 | 最長5年 | 最長20年 |
購入可能商品 | 投資信託・ETF・REITなど | 金融庁が認めた投資信託 |
非課税対象 | 分配金・配当金・譲渡益 | 分配金・譲渡益 |
積立NISAのデメリット6 新規に購入した投資信託のみが対象
積立NISAの対象になるのは、新規に購入した投資信託のみです。
仮に一般口座や特定口座で投資信託を保有していても、その投資信託を積立NISAに移管することはできません。
また投資信託は収益分配金が出ることがあり、これを受け取らず再投資に回すこともあります。
収益分配金は受け取るよりも再投資する方が投資効率は高まりますが、この再投資も投資信託の買付とみなされてしまいます。
積立NISAのデメリット7 損益通算や繰越控除はできない
複数の証券口座を使って投資していると、それぞれの証券口座では利益や損失が発生することがあります。
このとき、利益から損失を差し引き税負担を軽くすることができますが、これを損益通算と言います。
たとえばA口座で50万円の利益、B口座で40万円の損失が発生した場合、50万円-40万円=10万円が利益として課税対象になります。
では、B口座が積立NISA口座だったらどうなるのでしょうか。
積立NISA口座で損失が出ても、A口座の利益から差し引くことができないため、50万円がそのまま利益になってしまいます。
複数の証券口座で資産運用を行っている方には大きなデメリットになる可能性があります。
また損益通算をしてマイナスになった場合、繰越控除といって翌年以降の利益と相殺することができますが、積立NISAは繰越控除も認められていません。
積立NISAのデメリット8 非課税枠は復活しない・持ち越しもできない
積立NISAで非課税となる投資枠は1年で40万円です。
たとえば30万円を積立した段階で、その投資信託を売却したとします。この場合、その年の残る非課税枠は10万円です。
既に30万円の非課税枠を使っていた場合、その年にその投資信託を売却しても非課税枠が40万円に戻ることはありません。
また1年の中で30万円の投資にとどまっていた場合、非課税となる投資枠は10万円余りますが、これを持ち越して翌年50万円とすることもできません。
その年に非課税枠を使い切らなくても、持ち越しができないルールになっています。
さいごに
この記事では、積立NISAで考えられるデメリットを8つにまとめてご紹介してきました。積立NISAは比較的新しい制度なので、これからも見直しされる可能性があります。
そうすると今までのデメリットがデメリットでなくなったり、新たなデメリットが生まれる可能性もあります。
ただ、積立NISAは長く付き合っていく制度なので、金融機関などで勧められても「説得」ではなく「納得」して加入することが大切であるのは変わりありません。
ところで、公的年金の給付抑制の補う制度として国はいくつかの「自分年金」の制度を作っています。
その代表にあげられるのが、この記事でご紹介した積立NISAやiDeCo(確定拠出年金個人型)です。
もっとも、積立NISAとiDeCoでは特長がまったく異なります。
端的に言えば、積立NISAは20歳以上だけど年齢上限がない、「する」も「しない」も任意で決めることができて自由度が高い。
一方、iDeCoは公的年金の上乗せという位置づけなので、任意の脱退は認められていないし、一定年齢にならなければ受け取りもできない反面、税制は積立NISAよりも優遇されている。
それぞれに異なる特長があるので、積立NISAを検討されている方は、合わせてiDeCoも検討の対象に入れてはいかがでしょうか。