確定拠出年金は、国民年金や厚生年金など公的年金の上乗せとして設けられた新しい制度です。
もっとも、公的年金の給付削減を背景として、確定拠出年金は大きな役割を果たすようになっており、制度の見直しも逐次行われています。
その一つが、老齢給付金受給開始時期の選択肢拡大です。
この記事では、確定拠出年金の老齢給付金受給開始時期のルールと現在の選択肢、合わせて選択肢の拡大後の姿についてお伝えします。
なお、選択肢拡大の施行時期は2022年(令和4年)4月になっています。
目次
老齢給付金受給開始時期と選択肢【2022年(令和4年)3月まで】
老齢給付金の受給開始時期
国民年金や厚生年金などの公的年金と異なり、確定拠出年金の老齢給付金に受給資格期間はありません。
極端なことを言えば1カ月でも確定拠出年金に加入をしていれば、その分を老齢給付金として受け取ることができます。
ただし、確定拠出年金は貯蓄制度ではなく年金制度なので、老齢給付金の受給開始時期は掛金の拠出期間に応じて一定のルールがあります。
まずは、老齢給付金の受給開始時期について触れておきたいと思います。
60歳前までの加入期間に応じた老齢給付金受給開始時期
加入期間 | 受給開始時期 |
10年以上 | 60歳 |
8年以上10年未満 | 61歳 |
6年以上8年未満 | 62歳 |
4年以上6年未満 | 63歳 |
2年以上4年未満 | 64歳 |
1か月以上2年未満 | 65歳 |
※ 60歳前の加入期間はないが、60歳以降に加入期間を有した場合の受給開始時期は、加入をしてから5年を経過した日になります。
老齢給付金受給開始の選択肢
上記のとおり加入期間に応じて、老齢給付金の受給開始時期が定められています。
ただし、その年齢に達したら受給をしなければならないわけではなく、受給開始時期については選択肢があります。
現在は70歳になるまで、受給開始時期の選択が認められています。
たとえば、60歳になった段階で確定拠出年金の加入期間が10年あれば、老齢給付金は60歳から受け取ることができます。
しかし、公的年金とは異なり、確定拠出年金は自分で作ったお金を受け取る仕組みなので、そのお金がなくなれば老齢給付金の支給もそこで終わってしまいます。
60歳で受け取ることはできるけれど、まだ受け取りたくないという方は60歳から70歳になるまでの間で、自ら受給開始時期を決めることができます。
老齢給付金受給開始時期の選択肢【2022年(令和4年)4月以降】
上記でお伝えした、加入期間に応じた老齢給付金の受給開始時期についての変更はありません。
2022年(令和4年)4月の施行で変更になるのは、老齢給付金受給開始の選択肢です。
具体的に老齢給付金の受給開始時期は、現行は60歳から70歳の間で各個人が選択できるようになっているものを、施行後は70歳という年齢を75歳まで引き上げるというものです。
したがって2022年(令和4年)4月以降、老齢給付金の受給開始時期の選択肢は、60歳から75歳の間と拡大をされます。
まとめ 老齢給付金受給開始時期の選択肢拡大の理由
2020年の年金制度改革関連法では、公的年金や確定拠出年金などで様々な見直しが行われています。
公的年金についても数多くの見直しが行われていますが、その一つが繰下げ制度の見直しです。
65歳から受け取る公的年金を、66歳以降に受け取り開始をすることを繰下げと言いますが、繰下げをすることで支給率が増えるので、長生きをすれば繰下げをした人の受給総額は多くなります。
公的年金の繰下げについて、現行は70歳まで認められていますが、見直しにより2022年(令和4年)4月以降は75歳までの繰下げが可能になります。
公的年金の繰下げの見直しも、確定拠出年金の老齢給付金受給開始時期選択肢拡大の見直しも、施行時期は2022年(令和4年)4月。
公的年金の繰下げの見直しに合わせて、確定拠出年金の老齢給付金受給開始時期の選択肢拡大の見直しを行ったと言えそうです。
もっとも公的年金と確定拠出年金は基本的には別の制度です。
したがって、公的年金の繰下げと確定拠出年金の老齢給付金の受給開始時期は、それぞれ別個に選択することができます。