確定拠出年金は、国民年金や厚生年金など公的年金の給付抑制を背景として生まれた年金制度です。
根拠となる法律は確定拠出年金法なので、公的年金ではないけれど、それに近い性格を有する年金制度といえそうです。
確定拠出年金は企業型と個人型の2種類があります。
この中で個人型は加入できる人が限定をされていたので伸び悩んでいましたが、加入できる人を大幅に拡充して愛称をiDeCo(イデコ)としてからは大きく普及をしています。
この記事では、確定拠出年金企業型の概要とおすすめの運用法をご紹介をしていきます。
私はファイナンシャルプランナーとして確定拠出年金の講師を務めたことがあります。
また私自身も、iDeCoという愛称が生まれるずっと前から確定拠出年金個人型に加入をしています。
ただ100人のファイナンシャルプランナーがいれば、100通りのライフプランニングがあると言われる通り、確定拠出年金企業型のおすすめの運用法に絶対的な正解はありません。
これから書くのは私自身の知識と経験に基づいたものですが、あくまでも私見です。その点についてはご了解いただければと思います。
なお、確定拠出年金企業型を「企業型確定拠出年金」「企業型DC」と称することもありますが、この記事では確定拠出年金企業型という表現でお伝えをしていきます。
目次
確定拠出年金企業型の概要
確定拠出年金企業型に加入できるのは、厚生年金に加入をする会社員の方です。
現在は公務員の方なども確定拠出年金に加入できますが、こちらは確定拠出年金個人型(iDeCo)です。
確定拠出年金企業型を設置するのは企業です。したがって導入していない企業もあります。
また、確定拠出年金企業型を導入している場合であっても、勤務する従業員全員を加入対象とする場合もあれば、加入するかどうかを選択できる場合もあります。
これからは、確定拠出年金企業型を導入している企業に勤め、かつ、自らも加入していることを前提に記事を書き進めていきます。
確定拠出年金企業型の掛金は原則として企業が負担します。
掛金上限額は次のとおりです。
他の企業年金がある場合 | 月額2万7500円 |
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他の企業年金がない場合 | 月額5万5000円 |
※ 「他の企業年金」とは、厚生年金基金や確定給付企業年金などが該当します。
ここでお示ししたのはあくまでも上限額なので、すべての方にこれだけの掛金が支払われているわけではありません。
一般的には役職等で掛金が定められていることも多いので、上限額の支払いが行われている方は少ないと思われます。
そうした背景から、企業が負担する掛金とは別に個人が掛金を支出することが認められる場合(マッチング拠出)があります。
もっともマッチング拠出の有無は会社によって異なりますし、導入されている場合でも掛金の上限はマッチング拠出を含めての金額です。
確定拠出年金企業型に加入できる人の特徴
確定拠出年金企業型に加入できる人は、前提として厚生年金に加入をしています。
厚生年金保険料を支払っているので、将来は老齢基礎年金と老齢厚生年金を受けられる人です。
自営業の方が受けられるのは老齢基礎年金だけなので、会社員の方の公的年金は恵まれていると考えられます。
また少し前までは自営業は定年がないから有利だともいわれてきました。
しかし厚生年金の強制加入期間は70歳で、現在は60歳以降も厚生年金に加入する人も多くなっています。
公的年金の額、厚生年金に加入できる年齢、何れをとっても自営業の方よりも有利になることが多いと思います。
公的年金の額が多い、そして厚生年金に長く加入できる可能性が高いというのが、確定拠出年金企業型に加入できる人の特徴ともいえそうです。
確定拠出年金企業型のおすすめの運用法1
今後、公的年金は給付が抑制されていく可能性が高いようですが、それでも公的年金は安全確実です。
一方、確定拠出年金は掛金をもとに、自らが金融商品を選び運用をする自己責任の制度で、公的年金の上乗せとして「自分年金」を作るものです。
会社員の方は(厚生年金の加入年数が長ければ)、基盤となる公的年金はある程度は確保できています。
だとしたら確定拠出年金企業型の運用法は、積極的になっても良いのではないでしょうか。
確定拠出年金は運営管理機関が提示する商品を自ら選択して運用をします。
運営管理機関が提示する商品には、安全確実な元本確保型の商品もありますが、主力は投資信託などのいわゆるリスク商品です。
投資信託はリスクがあるということで拒否反応を示す方もいます。
確かに投資信託は損失が発生することもありますが、それでも金融商品の中では比較的リスクは低いとされています。
しかも確定拠出年金という制度の中での投資信託に、それほどリスクが高いものは存在していないように思われます。
会社員は公的年金がある程度見込める。
確定拠出年金内に高リスク商品はほとんど存在しない。
そんなことを考えると、確定拠出年金企業型ではより積極的な資産運用法をとっても良いと思います。
また、確定拠出年金内の元本確保型商品で運用を続けるのも可能ですが、昨今の利率ではほとんどお金を増やすことはできません。
元本確保型の商品だけで確定拠出年金を続けていくのはもったいないような気もします。
確定拠出年金企業型のおすすめの運用法2
確定拠出年金企業型では、より積極的な資産運用法、ある程度のリスクをとった運用法がおすすめです。
次に考えたいのは、どのようにリスクをとっていくのかということです。
ここで、ご紹介するのは資産運用の基本です。
長期投資
分散投資
長期投資
確定拠出年金は預貯金ではなく年金制度です。
途中でお金の出し入れができるわけでもなければ、原則として60歳以降にならなければ受け取りもできません。
一見、デメリットに見えそうですが、引き出しができない、60歳以降でなければ受け取りもできないということは、自動的に長期投資が可能ということを意味しています。
40歳の方ならば20年、50歳の方でも10年、長期投資が自動的にできるのが確定拠出年金の魅力です。
分散投資
分散投資は、一つの商品に掛金のすべてを振り向けないということです。
投資信託もさまざまな性格の商品があります。
たとえば掛金が3万円だった場合、私であれば1万円ずつに分けます。
そして、国内株式を対象にした投資信託、海外株式を対象にした投資信託、海外債券を対象にした投資信託に1万円ずつ投資をしていきます。
この3つは投資信託とはいっても異なった値動きをします。
たとえば、1万円ずつ3つの投資信託に振り向けたとしても、すべてが国内株式を対象にした投資信託だとすると、日本の株式市場の影響を受け同じような値動きをしてしまう可能性もあります。
今、ご紹介したのはほんの一例ですが、性格の異なる金融商品に掛金を振り分けることがおすすめと言えそうです。
確定拠出年金は自動的に長期投資ができる仕組みを持っています。また運営管理機関が提示する商品は複数あるので、分散投資をすることも可能です。
確定拠出年金企業型ではより積極的な運用をする。
運用に際しては長期投資・分散投資を心がける。
これが確定拠出年金企業型のおすすめの運用法です。
まとめ 50代の方の運用法
このサイトは「50歳台で考える老後のお金」をテーマにしています。
この記事の最後に、50代の方を対象に確定拠出年金企業型のおすすめの運用法をご紹介します。
まず、年代を問わずおすすめをするのは「分散投資」です。こちらについては、50代という年齢の幅を設けても変わりはありません。
ただ長期投資については考える必要がありそうです。
50代と言っても50歳の方は60歳まで10年ありますが、59歳の方は1年しかありません。10年ならば長期投資ですが、1年は長期投資になりません。
やはり期間の長短でリスクの取り方は異なります。
リスク商品での運用をおすすめしつつも、50代後半の方はその中に元本確保型の商品を取り入れ、バランスを整える作業が必要になってくるかもしれません。
また、人によってリスク許容度も異なります。
絶対に損をしたくない(リスク許容度が低い)人が、リスク商品だけで運用をするのはお金の損得は別にしても、精神衛生上良くないと思われます。
そこで、50代を前半と後半に分け、一つの表を作ってみました。
リスク許容度が低い | リスク許容度が高い | |
50代前半 | バランス運用 | 積極運用 |
50代後半 | 安定運用 | バランス運用・積極運用 |
※ バランス運用に定義はありませんが、ここでは安定運用と積極運用の中間と位置付けています。
もちろん、ここでお示ししたのは私見にすぎないので、参考程度にお考えいただければ幸いです。
ただ確定拠出年金では、選ぶ商品を変えることも可能ですし、預け替えることも可能です。年金制度なので不便な点もありますが、案外、自由度の高いのが確定拠出年金です。
確定拠出年金企業型ではより積極的な運用をするのがおすすめですが、あとは年齢やリスク許容度でご判断を頂ければと思います。