人生100年時代という言葉とは裏腹に、老後の生活を支える公的年金は給付が抑制されていきます。
そこで国は政策として自助努力で「自分年金」を作る制度を設けていますが、その代表例として挙げられるのが、積立nisaとiDeCoです。
何れも自分年金作りには有用な制度ではあるものの、積立nisaは金融庁、iDeCoは厚生労働省と所管に違いがあります。
国が後押しする制度であっても省庁が異なれば、その内容にも大きな違いがあります。
そこで、この記事では積立nisaとiDeCoの違いをお伝えすることにしました。
また、このサイトのテーマは「50歳台で考える老後のお金」です。
50代の人は、積立nisaとiDeCoのどちらを選ぶべきか、私見ですがそのあたりもお伝えしていきたいと思います。
目次
積立nisaとiDeCoの違い1 目的
積立nisaは、長期投資・積立投資・分散投資ができる仕組みになっていますが、必ずしも老後資金だけを目的にする制度ではありません。
iDeCoは、公的年金と同じく厚生労働省が所管する制度で、老後に受け取る公的年金の上乗せの年金を作ることを目的としています。
積立nisaとiDeCoの違い2 加入できる年齢
積立nisaは、20歳以上という条件があるものの、何歳までという年齢上限はありません。
iDeCoは、60歳未満と加入できる年齢に上限があります。
※ iDeCoは法律の見直しで、一定条件の元、年齢上限が65歳になる可能性があります。
積立nisaとiDeCoの違い3 投資できる金額
積立nisaは、1年につき40万円という上限があります。
iDeCoは、公的年金の加入種別で1年あたりの上限金額が異なっています。
種別 | 主な加入者 | 月額 | 年額 |
国民年金第1号被保険者 | 自営業者 | 68,000円 | 816,000円 |
国民年金第2号被保険者 | 会社員(※1) | 23,000円 | 276,000円 |
国民年金第2号被保険者 | 会社員(※2) | 20,000円 | 240,000円 |
国民年金第2号被保険者 | 会社員(※3) | 12,000円 | 144,000円 |
国民年金第2号被保険者 | 公務員 | 12,000円 | 144,000円 |
国民年金第3号被保険者 | 専業主婦(主夫) | 23,000円 | 276,000円 |
(※1) 会社員で厚生年金に加入はしているが、確定拠出年金企業型や確定給付企業年金には加入していない。
(※2) 会社員で厚生年金に加入していて、確定拠出年金企業型に加入をしている。
(※3) 会社員で厚生年金に加入していて、確定給付企業年金に加入をしている。
積立nisaとiDeCoの違い4 税制
積立nisaは、分配金や売買差益などが非課税になります。
iDeCoは、掛金拠出時は小規模企業等掛金控除、運用益は原則非課税、受取時は年金受取は公的年金控除・一時金受取は退職所得控除の適用があります。
※ 所得が少ない国民年金第3号被保険者は、掛金拠出時の税制優遇措置は受けられない可能性が高くなります。
積立nisaとiDeCoの違い5 受取開始
積立nisaは、投資期間を最長20年とすることはできるものの、受け取り開始そのものに制限はありません。
iDeCoは、60歳以降でないと受取ができません。また、加入していた年数で受取開始が65歳まで遅れる可能性があります。
なお、受取開始を最長70歳まで伸ばすことができます。
加入期間 | 支給開始年齢 |
---|---|
10年以上 | 60歳 |
8年以上10年未満 | 61歳 |
6年以上8年未満 | 62歳 |
4年以上6年未満 | 63歳 |
2年以上4年未満 | 64歳 |
1月以上2年未満 | 65歳 |
※ 上記の年数は、厚生年金基金や確定給付企業年金などの企業年金を通算できる場合もあります。
積立nisaとiDeCoの違い6 投資の対象
積立nisaは、投資信託とETFで金融庁が選定をしています。(2020年4月現在181本)
ただし、積立nisaを取り扱っている金融機関等は、金融庁が選定した商品の中から、さらに選別をしているので、実際の取扱い本数は10本前後の場合が多いようです。
iDeCoの申し込みは運営管理機関(金融機関など)に行います。運営管理機関はそれぞれ独自に複数の商品を提供しています
iDeCoで取り扱うのは、預貯金などの元本確保型などもありますが、主力になるのは投資信託です。
積立nisaもiDeCoも提示された商品の中から加入者が自ら選びます。なお、投資信託については積立nisaもiDeCoも販売手数料などコストが低いものが中心になっています。
積立nisaとiDeCoの違いのまとめ
積立nisa | iDeCo | |
目的 | 資産形成 | 老後の公的年金の上乗せ |
加入年齢の上限 | 上限はない | 現状は60歳まで |
投資できる金額 | 1年40万円以内 | 公的年金の種別により異なる |
税制 | 分配金・売買差益が非課税 | 掛金拠出時・運用時・受取時に優遇措置 |
受取開始 | 年齢制限はない | 60歳以降 |
投資の対象 | 金融庁が認めた投資信託・ETF | 運営管理機関が選んだ元本確保型商品・投資信託など |
積立nisaとiDeCo 50代はどっちを選ぶべきか
ここまで、積立nisaとiDeCoの違いを6つの視点からお伝えしてきました。
では「50代はどっちを選ぶべきか」の私見をお伝えしていきます。
結論を先に書くと、ある程度資金の余裕がある方は、積立nisaとiDeCoの併用がおすすめです。
積立nisaやiDeCoの利用を考えている方は、投資信託の購入が前提としてある場合が多いようです。
積立nisaやiDeCoの主力商品は投資信託で、一般の投資信託よりもコストが低く、税制も優遇されているという特長があります。
積立nisaもiDeCoも契約できるのは一つの金融機関等で、商品もそれぞれで選んでいます。そのため、積立nisaもiDeCoも実際に購入できる本数に制約があるのも事実です。
「この投資信託を購入したい」という強い思い入れがある方には、積立nisa・iDeCoは不向きな点があるかもしれません。
ただ、そうした思い入れがない方、あるいは投資に慣れていない方にとっては、何れも魅力的な制度です。
普段の生活を切り詰めなければいけないようであれば利用をおすすめすることはできませんが、そうでなければ併用をおすすめしたいところです。
では、次に年齢をもう少し分けて50代前半と50代後半で考えたいと思います。
50代の方が考えたいのが老後のお金の準備です。
では、老後のお金の準備に焦点を当てた場合、どちらが有利かというと税制の優遇措置に優れたiDeCoです。
したがって、50代の方には併用であっても、優先順位ではまずiDeCoをおすすめします。
ただ、資産の形成には時間が必要です。残念ながら、現状iDeCoに加入できるのは60歳までです。
50代前半であれば10年近い年数、運用を続けることができます。
しかし、50代後半だとその年数はずっと短くなってしまいます。資産形成の基本である、分散投資や積立投資はできても、長期投資ができないのは、気にかかることです。
またiDeCoの場合、加入期間が短いと受取開始年齢も遅くなります。
さらに、積立nisaは無料で口座を作ることができますが、iDeCoは管理にかかるお金がかかってきます。
50代後半だと運用年数が短いので資産もそれほど多くはならない。一方、管理にかかるお金はずっとかかってくる。
こうしたことを考えると、iDeCoを否定するところまではいかないものの、優先順位としては年齢上限がない積立nisaが優先されるのではないでしょうか。
50代はどっちを選ぶべきかのまとめ
50代全般 | 積立nisaとiDeCoの併用がおすすめ。 |
---|---|
50代前半 | 併用がおすすめだが、優先するのはiDeCo。 |
50代後半 | 併用がおすすめだが、優先するのは積立nisa。 |
ここでご紹介したのはあくまでも私見ですが、少しでも参考になれば幸いです。