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年金制度改正法【2020年5月成立】の概要をわかりやすく解説

年金制度のイメージイラスト
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公的年金は時々の環境変化に応じて、何回にもわたり大きな改正が行われています。特に有名な改正としては、昭和61年と平成16年の大改正があります。

ところで2020年5月に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が可決・成立しました。

この年金制度改正法は昭和61年や平成16年の大改正ほどではないにしても、いくつか大きな見直しが行われ、この法律の施行によって私たちの生活にも影響を及ぼしてきそうです。

そこで、この記事では2020年3月に国会提出され、2020年5月に可決・成立した年金制度改正法の概要をわかりやすくお伝えしていきます。

また、このサイトは「50歳台で考える老後のお金」をテーマにしています。

50代の方に影響を及ぼしそうな事柄を中心に、年金制度改正法の内容の一部については、別の記事でもご紹介しています。

この記事の本文中にリンクを貼っていますので、お時間のある方はぜひご覧になってください。

※ 2020年5月成立の「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」は、略して年金制度改正法、年金制度改革関連法など複数の呼称があります。この記事では、表記を「年金制度改正法」に統一してお伝えしていきます。

年金制度改正法成立までの経緯

2020年3月3日年金制度改正法案閣議決定・国会提出
2020年5月12日衆議院本会議で可決
2020年5月29日参議院本会議で可決・成立
2020年6月5日年金制度改正法公布
質問する人
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今回の年金制度改正法はどんな内容ですか?
答える人
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今回は見直しの項目が多岐にわたっています。今回は概要をわかりやすくお伝えしていきます。

年金制度改正法の趣旨

2020年5月に可決・成立した年金制度改正法は、働き方の多様化や高齢期の長期化に対応するための見直しが中心になっています。

言い換えると、既に老齢の年金を受け取っている方というよりも、今後、老齢の年金を受け取るであろう若い世代の方を対象とした見直しが中心です。

今回の年金制度改正法は、特に50代以下の世代の方に対して影響を及ぼす可能性がありそうです。

なお、これから年金制度改正法の概要をできるだけわかりやすくお伝えしていきますが、施行日はそれぞれに定められていますのでご注意ください。

年金制度改正法1 被用者保険の適用拡大

見直しの内容1企業規模要件の見直し2022年(令和4年)10月・2024年(令和6年)10月施行
見直しの内容2非適用業種の見直し2022年(令和4年)10月施行

被用者保険とは、会社員・公務員・私立学校の教職員が加入する保険です。保険と記載されている通り、この見直しは年金だけでなく健康保険にも及びます。

また、この見直しは適用拡大とあるように、厚生年金や健康保険に加入する人を増やすことを目的にしています。

見直しの内容1 企業規模要件の見直し

見直しの内容1は、企業規模要件の見直しです。

現在501人以上の企業に勤める短時間労働者は、一定要件を満たすと被用者保険への加入義務が発生します。

この企業規模を、100人超、50人超と2段階に分けて引き下げていきます。

501人以上の基準が100人超となるのは2022年(令和4年)10月。

100人超が50人超となるのは2024年(令和6年)10月の予定です。

なお、501人以上の基準を100人超とすることで、新たに被用者保険に加入する人は45万人の増。

さらに、100人超を50人超とすることで、新たに被用者保険に加入する人は20万人の増が見込まれています。

被用者保険の適用拡大は、厚生年金や健康保険に加入する人を増やすことを目的にしていますが、働く人から考えてもこの見直しは大きな影響を及ぼしそうです。

見直しの内容2 非適用業種の見直し

弁護士・税理士・社会保険労務士など法律や会計を取り扱う士業で、個人で事業を行っている場合は非適用業種とされていました。

しかし、事務能力についての問題点は発生しないことから、個人事業所でも常時5人以上使用している場合は、強制適用事業所にすることになりました。

年金制度改正法2 在職老齢年金の見直し

見直しの内容1在職定時改定の導入2022年(令和4年)4月施行
見直しの内容2在職老齢年金制度の見直し2022年(令和4年)4月施行

老齢厚生年金を受け取る権利のある方が、引き続き厚生年金に加入することを「在職」と称しています。

老齢厚生年金は老後の所得保障なので、厚生年金に加入して年収が高いのであれば、老齢厚生年金は支給を停止しても問題はないであろう。

この仕組みが在職老齢年金です。

ところで、老齢厚生年金の支給開始は65歳ですが、以前は60歳支給開始という時期が長らく続いていました。

60歳支給開始だったのを、急に65歳支給開始にすることはできないということで、今でも性別と生年月日に応じて60歳~64歳を支給開始とする経過措置があります。

この経過措置の年金を「特別支給の老齢厚生年金」、65歳から終身で支給される年金を「老齢厚生年金」と称しています。

在職老齢年金の仕組みは、特別支給の老齢厚生年金・老齢厚生年金とも適用されます。

見直しの内容1 在職定時改定の導入

在職定時改定の導入とは、65歳以上の在職老齢年金の見直しで、従来よりも改善された内容になっています。

見直しの内容2 在職老齢年金制度の見直し

在職老齢年金制度の見直しは、65歳未満に支給される特別支給の老齢厚生年金を受けられる方の見直しになります。

見直しそのものは大きな改善ですが、実際のところ特別支給の老齢厚生年金はもう少しで対象になる方がいなくなります。

内容的には大きな改善であるものの、見直しによる影響は極めて軽微なものと考えられています。

年金制度改正法3 受給開始時期の選択肢の拡大

見直しの内容1繰上げ減額率の見直し2022年(令和4年)4月施行
見直しの内容2繰下げ受給の上限年齢の引き上げ2022年(令和4年)4月施行
見直しの内容370歳以降に請求する場合の5年前時点での繰下げ制度の新設2023年(令和5年)4月施行

受給開始時期の選択肢の拡大とは、現在は60歳から70歳までという受給開始時期の選択を、60歳から75歳までと拡大するものです。

公的年金の支給開始は原則65歳ですが、60歳以降65歳前に受給開始することを「繰上げ」。

66歳以降に受給開始することを「繰下げ」と称しています。

見直しの内容1の繰上げ減額率の見直しは、繰上げに関連したもの。

見直しの内容2の繰下げ受給の上限年齢の引き上げと、見直しの内容3の70歳以降に請求する場合の5年前時点での繰下げ制度の新設は、繰下げに関連した見直しになります。

見直しの内容1 繰上げ減額率の見直し

見直しの内容1の繰上げ減額率の見直しは、これまでよりも繰上げが有利になります。

ただし、繰上げには様々なデメリットがあるので、慎重な検討が必要であるのは従来と変わりありません。

見直しの内容2 繰下げ受給の上限年齢の引き上げ

繰下げ受給の上限年齢の引き上げは、繰下げの上限を70歳から75歳へと延ばしたもので、高齢期の長期化に対応した見直しです。

もっとも、現時点でも繰下げをする人はそれほど多くはないので、どの程度の影響があるのかについては不明です。

見直しの内容3 70歳以降に請求する場合の5年前時点での繰下げ制度の新設

70歳以降に請求する場合の5年前時点での繰下げ制度の新設は、従来見られた法の不備を補うものと思われます。

ただ、見直しの内容2と同様、実際に大きな影響を及ぼすものではないように見受けられます。

年金制度改正法4 確定拠出年金(DC)制度の見直し

見直しの内容1DCの加入可能年齢の引き上げ2022年(令和4年)5月施行
見直しの内容2受給開始時期の選択肢の拡大2022年(令和4年)4月施行
見直しの内容3中小企業向けDC制度の対象の拡大公布日から6月を超えない範囲で政令で定める日
見直しの内容4DC企業型加入者のDC個人型(iDeCo)加入の要件緩和2022年(令和4年)10月施行
見直しの内容5その他の見直し施行日は内容ごとに異なる

確定拠出年金は確定拠出年金法で定められた制度で、公的年金の上乗せとして「自分年金」を作り、老後生活の安定を図ることを目的としています。

確定拠出年金は、英語で「defined contribution pension plan」ということで、略してDCと表記されることもあります。

確定拠出年金は企業で加入するDC企業型(確定拠出年金企業型)と、個人で加入するDC個人型(確定拠出年金個人型)があり、個人型にはイデコ(iDeCo)という愛称がつけられています。

確定拠出年金は新しい年金制度であることから改正の頻度も多く、今回の年金制度改正法にも多くの項目が盛り込まれています。

見直しの内容1 DCの加入可能年齢の引き上げ

DCの加入可能年齢については、DC企業型もDC個人型(イデコ)も引き上げが見込まれています。

DC企業型は、一定要件の元65歳未満であれば加入できていましたが、これを70歳未満に引き上げます。

DC個人型(iDeCo)は60歳未満という要件がありましたが、65歳未満の国民年金被保険者であれば加入できることになりました。

見直しの内容2 受給開始時期の選択肢の拡大

DCの受給開始年齢は60歳以上70歳以下ですが、70歳の年齢を75歳に引き上げます。

見直しの内容3 中小企業向けDC制度の対象の拡大

企業であっても規模が小さい場合、DC企業型を含め企業年金の実施は難しい状況にあります。

そのため中小企業であっても比較的設立が容易な制度として作られたのが、簡易型DCやiDeCoプラスです。

従来、中小企業の要件として従業員規模100人以下というのがありましたが、これを300人以下に改めます。

見直しの内容4 DC企業型加入者のDC個人型(iDeCo)加入の要件緩和

DC企業型に加入している人もiDeCoに加入することはできましたが、要件が厳しく利用実績はほとんどありませんでした。

見直し後は、DC全体の拠出限度額(月額55,000円以内)から事業主掛金を控除した額をiDeCoの拠出限度額とすることができます。

ただし、iDeCoの拠出限度額は月額20,000円以内となります。

見直しの内容5 その他の見直し

その他の見直しとしては、DC企業型の規約変更の簡素化、DC企業型のマッチング拠出とiDeCo加入の選択を可能とする、外国人に対するDCの脱退一時金の制度を創設する、DCやDB(確定給付企業年金)など制度間の年金資産移換の仕組みを拡充するなどがあります。

確定拠出年金(DC)制度の見直しのまとめ

確定拠出年金は度々見直しが図られ、少しずつ使い勝手もよくなっています。

今回も多くの見直しが行われていますが、数は多いものの、どちらかといえば軽微な変更が多いように見受けられます。

確定拠出年金は今後も見直しが行われる可能性が高いと思われますので動向に注意をしておきたいところです。

年金制度改正法5 その他の見直し

その他の見直しについては、項目のみを列記させていただきます。

1 国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切り替え

2 未婚のひとり親等の申請全額免除基準への追加

3 脱退一時金制度の見直し

4 年金生活者支援給付金制度における所得・世帯情報の照会の対象者の見直し等

5 児童扶養手当と障害年金の併給調整の見直し

6 2か月を超えて雇用が見込まれる者の被用者保険の早期加入措置

7 厚生年金保険法における日本年金機構の調査権限の整備

8 年金担保貸付事業等の廃止

まとめ

この記事では2020年5月に可決・成立した年金制度改正法の概要を、わかりやすくを心がけてお伝えしてきました。

今回の年金制度改正法は、働き方の多様化や高齢期の長期化に対応を目的として、さまざまな見直しが行われています。

また、今回の年金制度改正法は既に年金を受給している人ではなく、これから年金を受給する若い世代の方に向けた見直しが主となっています。

このサイトは「50歳台で考える老後のお金」をテーマにしていますが、特に50代以下の世代の方に対して影響を及ぼす可能性が高いようです。

なお、冒頭でもご紹介しましたが、この記事では年金制度改正法の概要をご紹介しています。

年金制度改正法の内容の一部、特に50代の方に影響を及ぼしそうな事柄については、別に記事を作成しています

この記事の本文中にリンクを貼っていますので、お時間のある方はぜひご覧になってください。

また、今回の年金制度改正法については既に新たな課題も出てきています。この課題については、以下の記事をお読みになってください。

質問する人
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今回の年金制度改正法は、これから年金を受給する若い世代の方に向けた見直しが多いんですね。
答える人
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特に50代より下の世代の方にとって影響のある見直しになりそうです。