この記事では、ねんきん定期便の見方をご案内していきます。
ねんきん定期便がスタートしたのは2009年度。
ねんきん定期便が届くのは国民年金や厚生年金に加入をしている人で、毎年の誕生月(1日が誕生日の方は誕生月の前月)に送られてきます。
また、共済組合(国家公務員・地方公務員・私立学校の教職員)に加入している人にも、2015年10月の「被用者年金一元化」以降は定期的に届けられるようになっています。
ねんきん定期便は大きく分けて3種類あります。
3種類とは、50歳未満の人、50歳以上の人、60歳以上で老齢年金の請求手続きを行っている人で、大きな違いは将来受け取れるであろう年金の見込額記載の有無です。
50歳未満の人は、老齢の年金を受けられるまで相当の年数があります。
50歳未満の人に届くねんきん定期便に書かれている年金見込額は、それまでの加入実績に基づいた年金額で、将来受け取れるであろう見込額ではありません。
また、60歳以上で老齢年金の請求手続きを行っている人にも年金の見込額は書かれていません。
請求を行った方には、毎年6月に「年金額改定通知書」などが送られます。既に請求をした方には、実際の金額のお知らせが届くので、ねんきん定期便に見込額は記載されません。
このサイトは「50歳台で考える老後のお金」をテーマにしています。
そこで、50歳以上の人で老齢年金の請求手続きをしていない人を対象に「ねんきん定期便」の見方をお伝えしていきます。
ねんきん定期便の見方を知りいくらもらえるのか確認し、老後のお金の準備をお考えになってみてください。
なお、50代の方でも通常の年は「ハガキ」のねんきん定期便。59歳の方には水色の封筒に入ったねんきん定期便が送られてきます。
最初は「ハガキ」のねんきん定期便の見方についてご案内をしていきます。
※ この記事の中に実際のねんきん定期便の画像を入れる予定でしたが、鮮明な画像を作ることができませんでした。ご自身のねんきん定期便をお手元に置いて記事を読み進めてください。
目次
ねんきん定期便のポイントと見方1 これまでの年金加入期間
それでは、ねんきん定期便に記載されている「これまでの年金加入期間」の大切な2つのポイント、次に表の見方をご案内します。
「これまでの年金加入期間」のポイント
ポイント1
「これまでの年金加入期間」の欄で最も重要なのは、表のすぐ上に書かれている「老齢年金の受け取りには、原則として120月以上の受給期間が必要です」の部分です。
年金を受け取るには25年以上の加入が必要と言われてきました。
現在でもそうお考えの方も多いようですが、2018年8月以降は120月(10年)以上あれば、年金を受け取ることができるようになっています。
ポイント2
「これまでの年金加入期間」に記載されている月数は、ねんきん定期便作成時点での月数(原則として誕生月の4か月前までの月数)が記載されています。
ねんきん定期便は毎年届くので、月数は(保険料を未納にしていなければ)年を重ねるに伴い増えていきます。
「これまでの年金加入期間」の見方
それでは、「これまでの年金加入期間」の見方をご案内していきます。
国民年金(a)
第1号被保険者(未納月数を除く)
国民年金第1号被保険者は、日本国内に住む20歳以上60歳未満です。ただし、後述する第3号被保険者や厚生年金などの加入者は除きます。
第1号被保険者は、自分で国民年金保険料を支払います。国民年金保険料は所得に関らず定額なので、納付が厳しいと未納が発生することもあります。
未納は10年の受給期間には入りません。そのため表には「未納月数を除く」と記載されています。
なお、国民年金保険料は所得が低いなどの場合、免除や猶予を利用することができます。
免除や猶予は法律で定められている制度なので、未納とは異なり一定条件を満たせば受給期間に入れることができます。
第3号被保険者
国民年金第3号被保険者は、会社員や公務員などに扶養をされている20歳以上60歳未満の配偶者(性別は問いません)で、国民年金保険料を支払っていなくても支払ったものとみなされます。
国民年金 計(未納月数を除く)
第1号被保険者(未納月数を除く)と第3号被保険者の合計月数が記載をされています。
厚生年金保険(b)
従来、厚生年金は会社員が加入する制度で、公務員などは共済組合に入っていました。
2015年10月に国民年金・厚生年金・共済組合が法律上一つになったことで、ねんきん定期便にもそれぞれの制度の加入月数が記載されるようになっています。
一般厚生年金
一般厚生年金には、従来の厚生年金加入者(会社員など)の加入月数が記載されています。
公務員厚生年金(国家公務員・地方公務員)
公務員厚生年金には、国家公務員と地方公務員の加入月数の合計が記載されています。
私学共済厚生年金(私立学校の教職員)
私学共済厚生年金には、私立学校の教職員の加入月数の合計が記載されています。
厚生年金保険 計
一般厚生年金・公務員厚生年金・私学共済厚生年金の合計月数が記載をされています。
船員保険(c)
船員を対象とする船員保険は医療保険と年金保険を合わせて行っていましたが、1981年4月以降、職務外の年金保険は厚生年金保険に統合されています。
したがって、記載されている月数は1981年3月までの期間になります。
※ 職務上の事由による障害や遺族の年金給付は引き続き船員保険制度の中で行われていましたが、2010年1月以降は労働者災害補償保険(労災保険)に統合されています。
年金加入期間合計(a+b+c)
ここの合計月数が120月以上であれば、老齢年金を受け取ることができます。
また120月以上あれば「3 老齢年金の種類と見込額(年額)」に受給開始年齢や金額が記載されるようになります。
合算対象期間等(d)
合算対象期間は、最終的に年金加入期間合計(a+b+c)が120月に満たない場合に利用する期間です。
年金制度は長い歴史があり、仕組みも大きく変化をしています。
たとえば、第3号被保険者制度は1981年4月にスタートしていますが、それ以前に会社員の夫(妻)に扶養されている妻(夫)は第3号被保険者ではなく、国民年金に任意加入でした。
任意加入をしなかった人は「未納」という扱いにはなりません。
ただし、10年の受給資格期間には含まれるものの、国民年金保険料を納めていないので年金額の計算対象にはなりません。
合算対象期間は、10年の受給資格期間には入れるけれど、年金額の計算対象とはしない期間のことです。
合算対象期間はたくさんの種類がありますが、受給資格期間が25年から10年へ短縮されたことで使うことはほとんどなくなっています。
受給資格期間(a+b+c+d)
年金加入期間合計(未納期間を除く)が120月なくても、合算対象期間等(d)を加えれば120月以上になる場合、老齢年金を受け取ることができます。
また「3 老齢年金の種類と見込額(年額)」に受給開始年齢や金額が記載されるようになります。
ねんきん定期便のポイントと見方2 老齢年金の種類と見込額(年額)
最初に「老齢年金の種類と見込額(年額)」の大切な2つのポイント、次に表の見方をご案内していきます。
「老齢年金の種類と見込額(年額)」のポイント
ポイント1
「老齢年金の種類と見込額(年額)」の欄で最も重要なのは、表のすぐ上に書かれている「現在の加入時条件が60歳まで継続すると仮定して見込額を計算しています」の部分です。
前述のとおり「これまでの年金加入期間」は、誕生月の4か月前までの加入月数。
一方、「老齢年金の種類と見込額(年額)」は、定期便が届いた時点の状況が60歳まで続いたと仮定した場合の金額が記載されています。
たとえば、ねんきん定期便が届いた時点で第3号被保険者であれば、その状況が変わらず60歳まで続いたという前提。
ねんきん定期便が届いた時点で厚生年金保険に加入していた場合は、その時点の報酬や賞与が60歳まで変わらず続くという前提で見込額が計算されています。
ポイント2
年金制度は複雑です。
これからご案内していく「老齢年金の種類と見込額(年額)」の各欄の説明は細かく、理解しにくい部分もあるかもしれません。
ただ最も大切なのは、何歳からどれくらいの年金を受け取れるのかという点です。
「これまでの年金加入期間」の記載されている月数に間違いがなければ、「老齢年金の種類と見込額(年額)」の記載に誤りがある可能性はかなり低くなります。
あくまでも見込額なので間違いなくこの金額が支給されるわけではありませんが、一つの目安としては十分に活用できます。
説明を読むのは面倒という方は、この後に記載をしている「何歳から、いくら受け取れるか」の部分だけをご理解いただければと思います。
それでは、「老齢年金の種類と見込額(年額)」の見方をご案内していきます。
「老齢年金の種類と見込額(年額)」の見方
(1)老齢基礎年金
老齢基礎年金は65歳から終身で支給される年金です。
老齢基礎年金は、65歳前より受け取る「繰上げ」、66歳以降に受け取りを開始する「繰下げ」という制度があります。
ねんきん定期便に記載されている老齢基礎年金は65歳支給を前提に記載されていて、繰上げでも繰下げでもない見込額となっています。
(2)厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)
老齢厚生年金も老齢基礎年金と同じように65歳から終身で支給される年金です。ただし、厚生年金には長い歴史があり、60歳支給開始という時期が長く続いていました。
昔は60歳支給開始、今は65歳支給開始では不公平です。そこで少しずつ60歳から65歳へ支給開始を遅らせていく経過措置が設けられました。
この経過措置の年金を「特別支給の老齢厚生年金」、65歳から支給される年金を「老齢厚生年金」と称しています。
特別支給の老齢厚生年金は、性別と生年月日で支給される形が変わっていきます。
60歳~64歳で支給される経過措置の年金 ⇒ 特別支給の老齢厚生年金
65歳~終身で支給される年金 ⇒ 老齢厚生年金
特別支給の老齢厚生年金は経過措置の年金で、60歳から65歳になるまで支給をされるもので、1階が定額部分、2階が報酬比例部分の2階建てで構成されています。
1階の定額部分は、厚生年金の加入月数のみで金額が計算されます。
2階の報酬比例部分は、厚生年金の加入月数と、給与や賞与の金額を加味して計算されます。報酬比例部分の年金は、厚生年金の加入月数が長く、その間の給与や賞与が高い方ほど、見込額も多くなります。
特別支給の老齢厚生年金は経過措置なので徐々になくなっていきます。そのなくなり方は、最初は定額部分がなくなり、次に報酬比例部分がなくなるという、2段階制になっています。
(2)厚生年金(老齢厚生年金)
老齢厚生年金は、老齢基礎年金と同じように65歳から一生涯支給される年金です。
老齢厚生年金は、特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分の計算式と同じです。
経過的加算部分
「老齢基礎年金は40年間(20歳以上60歳未満)の加入月数により年金額が計算され、40年間については国民年金の期間も厚生年金の期間も計算対象になります。。
したがって20歳から60歳まで、国民年金(納付をした期間)と厚生年金の期間ですべての期間が埋められていれば、65歳からいわゆる「満額」の老齢基礎年金を受け取ることができます。
ところで、厚生年金については20歳前から、あるいは60歳以降も加入を続けることがあります。
この場合、保険料を支払っているので、その保険料から老齢厚生年金の額が計算されます。
しかし、老齢基礎年金の計算対象になるのは、あくまでも20歳以上60歳未満です。
たとえば、高校を卒業して会社に勤めれば厚生年金に加入します。しかし、入社から20歳までの保険料は老齢厚生年金として計算されますが、老齢基礎年金の対象にはなりません。
同じ保険料を支払っても、20歳から60歳になるまでは老齢基礎年金と老齢厚生年金になるのに、20歳前は老齢厚生年金にはなっても老齢基礎年金にはならない。
この不公平さを補うために設けられたのが経過的加算です。経過的加算は老齢基礎年金と同じような計算をして、老齢厚生年金の一部として支給が行われます。
経過的職域加算額
「老齢年金の種類と見込額(年額)」の表で、公務員厚生年金期間と私学共済厚生年金期間に、(経過的職域加算額(共済年金))の欄があります。
一般厚生年金期間にこの欄はありませんが、公務員と私学共済にはあります。経過的職域加算額(共済年金)とは何でしょうか。
会社員などが受けられる老齢厚生年金は、定額部分と報酬比例部分の2階建てで構成されていました。
会社によっては、さらに上乗せとして「厚生年金基金」など設けられていることもありますが、その有無は会社によって異なります。
一方、公務員共済と私学共済には自動的に厚生年金基金に似た「職域加算」が設けられていました。
その金額は、共済の加入期間が20年未満であれば報酬比例部分の1割相当分、20年以上であれば2割相当分です。
厚生年金にはないのに、共済年金には自動的に経過的加算がついてくる。この不公平感が2015年10月の「被用者年金一元化法」につながっていきます。
2015年10月以降、経過的加算の制度は廃止されています。したがって、経過的加算として年金額が計算されているのは、2015年9月分までです。
まとめ「何歳から、いくら受け取れるのか」
老齢年金の種類と見込額(年額)の見方について、それぞれの欄の説明をしてきました。
一つ一つが大切なことなので細かな説明になりましたが、最も大切なのは「何歳から、いくら受け取れるのか」です。
何歳からについては、受給開始年齢の欄をご覧ください。そして、次に受給開始年齢の下に書いている、1年間の受取見込額をご覧ください。
これが答えになります。
特別支給の老齢厚生年金には60歳から64歳までの数字が入ります。この年齢は、性別や生年月日により異なります。
例えば、特別支給の老齢厚生年金の年齢が63歳、その下の1年間の受取見込額が900,000円とあった場合、この方は63歳と64歳の2年間で1年あたり90万円が受け取りの見込額になります。
※ 見込額900,000円と書きましたが、実際の見込額は円単位で記載されます。
特別支給の老齢厚生年金はもうしばらくするとなくなります。
現在50代の方は、特別支給の老齢厚生年金を受け取れない方が多くなっています。その場合、特別支給の老齢厚生年金の欄には年齢も見込額も記載されません。
現在50代の方の多くは「3 老齢年金の種類と見込額(年額)」の表の一番右側だけに、「65歳~」という年齢と、一番下に1年間の受取見込額の記載があるはずです。
65歳から受け取る年金額は、1年間の受取見込額であり、この金額が一生涯支給されることになります。
59歳の方に届くねんきん定期便(A4版)の確認ポイント
公的年金制度で、35歳・45歳・59歳は「筋目の年齢」と言われています。
国民年金の場合20歳から加入するので、35歳は15年目、45歳は25年目ということで、通常のねんきん定期便よりも豊富な情報が提供されます。
また、59歳も年金の支給開始まであと数年なので、ハガキではなくA4版のねんきん定期便が届けられます。
ここでは、59歳のねんきん定期便で確認をしておきたい、ねんきん定期便に同封されている「これまでの年金加入履歴」の確認ポイントについてお伝えします。
59歳の方に届くねんきん定期便は、角2の水色の封筒で送られてきます。封筒を開けると中に様々な資料が入っています。
どれもが貴重ですが、特に確認をしておきたいのがこれまでの『年金加入履歴』という用紙です。
年金加入履歴では、次の2つのことを確認しておくことをおすすめします。
ポイント1
1つ目の確認ポイントは、全体の記録です。
ご自身の年金加入履歴を思い出していただき、書いてあることと突き合わせをしてください。
この記録があっていれば、先ほどご案内した「老齢年金の種類と見込額(年額)」に記載された金額も間違いないと考えても差し支えありません。
記録が違っていると見込額も異なってきますので訂正が必要です。
水色の封筒には、記録が間違っていた場合の連絡先が記載されていますので、早めの修正をおすすめします。
ポイント2
2つ目の確認ポイントは、厚生年金基金の有無です。
厚生年金に加入をしている方の中には、合わせて厚生年金基金に加入をしている場合があります。
厚生年金基金は、確定給付企業年金や確定拠出年金とともに企業年金の一つに数えられています。
ただ厚生年金基金が他の企業年金と異なるのは、厚生年金基金は国の老齢厚生年金(報酬比例部分)の一部を受け取り、厚生年金基金として支給をしている点です。
他の企業年金も公的年金の上乗せという位置づけですが、あくまでも公的年金の上乗せです。
一方、厚生年金基金は老齢厚生年金の一部をもらい受け、さらに加算部分を支給するという形態をとっています。
そのため、ねんきん定期便に他の企業年金の記録はありませんが、厚生年金基金だけは記載されるようになっています。
厚生年金基金に加入していた場合、表では「③お勤め先の名称等」の中に記載をされています。
厚生年金基金は公的年金ではありませんが、厚生年金と同じような動きをします。具体的には、厚生年金と支給開始年齢が同じで終身で支給されます。
50代の方に届くねんきん定期便でも、厚生年金基金の有無がわかるのは59歳時に届くねんきん定期便だけです。
また、厚生年金基金は加入期間などで問合せ先、請求先が異なります。
厚生年金基金の問合せ先は、水色の封筒に同封されている説明書に記載をされています。厚生年金基金の加入履歴が確認できた方は、その説明書もご覧になってください。
ねんきん定期便で勘違いしやすいポイントを簡単解説
この記事の最後に「ねんきん定期便」で勘違いしやすいポイント5点あげて、その答えをお伝えしていきます。
ご紹介をするのは年金相談でも多いご質問です。
Q1 年金を早く受け取ると損をするから手続を遅らせたい
これは、年金相談で最も多いご質問です。
老齢厚生年金には経過措置として特別支給の老齢厚生年金があります。特別支給の老齢厚生年金はやがてなくなりますが、まだ受け取れる人もたくさんいます。
そうした方のねんきん定期便には、特別支給の老齢厚生年金の欄に60歳~64歳までの年齢が記載されています。
たとえば、63歳から特別支給の老齢厚生年金が受け取れる方がいたとします。
しかし、これを見たお客様は早くもらうと損をする。だから63歳ではなく65歳で手続きをしたい。
私自身の経験で申し上げると、10人のお客様のうち3~4人はこのように勘違いされています。
そのようなとき、私は特別支給の老齢厚生年金の仕組みをご説明します。ほとんどはそれでご理解をいただけますが、それでも納得をしない方もいます。
そこで、次に私が申し上げるのは、ねんきん定期便の発行者である「日本年金機構」がお客様の損になることを書くわけがないとお伝えします。
老齢年金には繰上げの制度があるのは事実です。ただ、繰上げにはメリットだけでなく、多くのデメリットも存在し、トラブルも数多く報告されています。
ねんきん定期便に繰上げという要素はまったく入っていません。ねんきん定期便に記載されている年齢に達したら手続きをするのが大原則です。
Q2 年金は働いていると貰えないから退職後に手続きをしたい
これも年金相談でよくあるもので、男性からのご質問が多いという特徴があります。
特別支給の老齢厚生年金あるいは老齢厚生年金を受けられる年齢でも、同じ方が厚生年金に加入し、年収が多いと年金は一部または全部が支給されなくなります。
どうしてかというと、老齢厚生年金は厚生年金のお財布から出る「老後のお金」という性格があるためです。
一方、厚生年金に加入をすると厚生年金保険料計算のため、会社から日本年金機構に給与や賞与の額が報告されます。
老後の年金(老齢厚生年金)を受け取る権利はあるけれど、厚生年金に加入をして年収が多いなら、老後の年金は支給しなくてもよい。
現在の法律はこう考えています。
老齢厚生年金を受け取る権利のある方が厚生年金に加入することを、年金用語で「在職」と言います。
そして在職の方の年収が高いと「特別支給の老齢厚生年金」「老齢厚生年金」は「在職老齢年金」と名前を変え、支給額が減らされてしまう、あるいは支給されないということがあります。
在職老齢年金の仕組みを知っている方は、手続きをしても貰えないのだから、今ではなく退職したら手続きをしようと考えます。
貰えないから手続をしないというのは心情的には理解できます。
でも、年金は権利が生まれたときに、その権利を主張するために手続きをするというのが大原則です。
年金の支給開始年齢になったら手続きだけはしておく。これは強くおすすめしておきたいポイントです。
なお、在職老齢年金は厚生年金保険料を払っても老齢厚生年金が受け取れない仕組みです。
一方、政府は70歳まで働く政策を推し進めています。
70歳まで働くことを前提にした場合、在職老齢年金は働く意欲を阻害する要因になります。
この記事を書いている段階では、まだはっきりとしていませんが、近い将来、在職老齢年金は基準の緩和される可能性もでてきています。
Q3 去年と今年のねんきん定期便で見込額が変わっているのはなぜ
この場合、2つのことが考えられます。
一つは、年金額の見直しがあった。もう一つは、加入している年金制度の種別が変わったです。
まず「年金額の見直しがあった」ですが、年金額は毎年度見直しをされます。
以前の年金額の見直しの原則は物価や賃金でした。簡単に言えば、物価や賃金が上がれば年金額は上がり、物価や賃金が下がれば年金額も下がるというものです。
このルールは現在も残っていますが、現在はもう一つ「マクロ経済スライド」という要素が加わっています。
マクロ経済スライドの背景にあるのは少子高齢化です。
少子高齢化で年金の保険料を払う人が少なくなり、年金を受け取る人が多くなる。年金制度を維持するためには年金の支給額を抑えなければいけない。
これがマクロ経済スライドです。
たとえば物価や賃金が2%あがれば、年金額も2%上昇をします。しかし少子高齢化でマクロ経済スライドの率を1%にする必要がある。
このとき新しい年度の年金額は1%の上昇にとどまります。(2%-1%)
今後、年金額が上がらないわけではありませんが、マクロ経済スライドの影響で上がり方は抑制されます。もちろん、下がる可能性も十分にあります。
そのため、前年の年金額が下がったと訴える人が、ことのほか多いというのが実際のところです。
次に「加入している年金制度の種別が変わった」ですが、ねんきん定期便の「これまでの年金加入期間」は、ねんきん定期便作成時点の月数。
一方、「老齢年金の種類と見込額」はそのときの加入している年金の種別が60歳まで続くと仮定して計算されています。
たとえば、ねんきん定期便が届いた時点では第1号被保険者だったが、直後に厚生年金に加入をした。このような場合、次のねんきん定期便は老齢厚生年金の額が増えて見込額が記載されます。
反対にねんきん定期便が届いた時点では厚生年金に加入していたが、直後に退職して第3号被保険者になった。このような場合、次のねんきん定期便は老齢厚生年金の額が減って見込額が記載されます。
加入している年金制度の種別が変わると、ねんきん定期便に記載の金額も増減します。特に会社員から個人事業主として起業を考えている方は注意が必要です。
Q4 ねんきん定期便の「2.これまでの年金加入期間」に月数は記載されているが、「3.老齢年金の種類と見込額(年額)」に金額の記載がないのはなぜ
この場合、2つのことが考えられます。
一つは、年金の受給資格がない。もう一つは、年金の記録が間違っているです。
まず、年金の受給資格がないですが、受給資格がないと「3.老齢年金の種類と見込額(年額)」に金額は記載されません。
では、その人は年金を受け取ることができないかというと必ずしもそうとも言えません。
ねんきん定期便に書いてある、これまでの年金加入期間の合計月数は、そのねんきん定期便が届いた時点での月数です。
たとえば50歳の時に届いたねんきん定期便の合計月数が110月の場合、この段階では受給資格がないので見込額も記載されません。
しかし、この人が厚生年金加入中であれば1年後の51歳のねんきん定期便の月数は122月となり、受給資格が生まれるとともに金額も記載されるようになります。
次に「年金の記録が間違っている」場合です。
年金の種別は大きく分けて3つの種別があります。
それは国民年金第1号被保険者、国民年金第3号被保険者、そして厚生年金加入者です。
厚生年金加入者については国民年金法という法律の中では、国民年金第2号被保険者と位置づけられています。
公的年金はこの3つの種別がありますが、優先順位も決まっていて第2号⇒第3号⇒第1号で、何れか一つにしか加入ができません。
つまり、厚生年金に加入している人(国民年金第2号被保険者)は、第3号にも第1号にもなれないということです。
ところが、この記録が重複していることがあります。この場合、年金記録が間違っていると判断され、年金の見込額にも金額は記載されません。
このような時は年金記録の訂正が必要です。
もし、120月以上あるのに見込額の記載がないようなときは、ねんきん定期便に記載の問合せ先にお尋ねになってください。
Q5 厚生年金の加入期間が長く、年収も世間並みだったのに「3.老齢年金の種類と見込額(年額)」の金額が少ないのはなぜ
このご質問は男性から寄せられることが圧倒的に多いという特徴があります。
男性の中には学校を卒業して、一つの会社にずっと勤め続けている人もいます。この場合、就職から退職までで約40年の厚生年金期間を作ることができます。
ところで、老齢厚生年金(報酬比例部分)は、厚生年金の加入月数と、給与と賞与の金額を加味して決められます。
したがって、一人一人の方の老齢厚生年金の具体的な金額は、ねんきん定期便でしか確認することはできません。
ただ年金相談をしていると経験則から何となく相場というものはわかってきます。
一つの会社で厚生年金に加入を続けていて、世間並みの年収で仕事を続けていた場合、厚生年金加入1年から生まれる老齢厚生年金の額は25,000円~30,000円程度になります。
仮に世間並みの給料で40年間厚生年金に加入した場合、老齢厚生年金は100万円~120万円程度を見込むことができます
※ 25,000円×40年=100万円、30,000円×40年=120万円
ところが、ねんきん定期便を見ると老齢厚生年金の額が20万円程度になっている人がいます。
多くの方が日本年金機構の間違いであると思われているようですが、年金加入記録が正しければ、年金の見込額が間違えている可能性はかなり低いと考えられます。
では、本来100万円~120万円期待できる老齢厚生年金の額が、20万円となっている理由は何でしょうか。
その理由は厚生年金基金の存在です。
厚生年金基金は国の老齢厚生年金の一部をもらい受け、それを基本年金として支給をしています。
言い換えると、厚生年金基金に加入していた期間が長い方ほど、国からの支給が少なく、基金からの支給が多くなります。
この事例でいえば、
老齢厚生年金の額が100万円の場合、国から20万円、基金から80万円が支給。
老齢厚生年金の額が120万円の場合、国から20万円、基金から100万円が支給
ということになります。
現在、同じ会社に勤め続ける人は少なくなっています。
また厚生年金基金もなくなっている場合が多いため、このご質問も減ってはいますが、厚生年金基金がある方は国の年金が少なくなるというのは事実です。
さいごに
この記事では「ねんきん定期便の見方を知っていくらもらえるのか確認しよう!」をテーマに、ねんきん定期便の見方を中心にお伝えしてきました。
50代の方のねんきん定期便には、将来の年金見込額が記載されています。見込額なので、その金額も年度ごとに変わっていきますが参考にすることはできます。
さて「人生100年時代」で、老後の期間もさらに長くなることが見込まれています。
老後が長くなることは喜ばしいことでも、老後貧乏・老後破産の心配も大きくなってきました。
ぜひ、公的年金の金額をご理解いただいたうえで、ご自身の老後のお金の過不足を確認なさってください。