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年金手帳の色の違いでわかる制度の移り変わりを簡単解説します!

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年金相談をしていると、次のようなご質問を受けることがあります。

「私は年金手帳を持っていないけど大丈夫なんですか?」

このようなご質問をされるお客様の中には、本当に年金手帳を紛失された方もいます。

紛失された方には、年金手帳の再発行の方法をご案内することもありますが、実はこのご質問が最も多いのは公務員の方です。

公務員のお客様からも様々なご相談を承りますが、周囲の人は年金手帳を持っているのに自分は持っていない。そんなことが一番の心配事になっていることも案外と多いようです。

結論を言えば、公務員の方に年金手帳は交付されてはいません。

公務員のお客様に交付されていないことと、その理由をお話しすると、とても安心される場合が多いのはとても印象的です。

ところで年金制度に歴史があるように、年金手帳にも時期による色の違いがあります。

この記事では、年金手帳の色の歴史について簡単にお伝えしていきます。年金手帳の色の違いから、年金制度の歴史の移り変わりが少しわかってきます。

また、近い将来ですが、年金手帳はなくなる可能性も出てきました。そんなことも記事の中で触れていきたいと思います。

質問する人
質問する人
年金手帳にはオレンジ色や青色があるけど大丈夫なんですか?
答える人
答える人
年金手帳は時期などによって表紙の色に違いがあるんですよ。

年金手帳の色の違い1 国民年金の場合

年金手帳のイメージイラスト

国民年金が始まったのは昭和36年4月で、国民年金加入者には手帳が交付されています。

手帳の名称は「国民年金手帳」。

手帳の表紙の下部には「厚生省」の印字、色はカーキ色、大きさは現在の青い年金手帳と同じです。

公的年金といっても、当時の国民年金と厚生年金はまったく別の制度だったので、国民年金単独で手帳が作られ加入者に交付されています。

※ 国民年金手帳の表紙の色はカーキ色と書きましたが、他にも水色や肌色の手帳が交付された時期もありました。

「国民年金手帳」が「年金手帳」に変わったのは昭和49年11月頃で、このときから国民年金加入者にも、オレンジ色の「年金手帳」が交付されています。

また、当時の国民年金制度の運営主体は社会保険庁だったので、表紙の下部には「社会保険庁」と印字されています。

国民年金と厚生年金は公的年金とはいえ、基本的には別の制度です。

昭和61年4月に基礎年金制度が導入されました(この時に「老齢基礎年金」という年金の名称が誕生しています)ました。

この時点で、国民年金と厚生年金ある程度の接近は図られていますが、それでも国民年金と厚生年金は別の制度ととらえられています。

たとえば、オレンジ色の年金手帳の表紙をめくると、国民年金の番号を記載する欄と厚生年金の番号を記載する欄が別々になっていることが分かります。

これを一般的に「国民年金の手帳番号」「厚生年金の手帳番号」と言っていますが、国民年金と厚生年金では同じオレンジ色の年金手帳が交付されているとはいえ、それぞれに番号が付されていて制度的にも別個のものであるということが分かります。

これが一変したのが平成9年1月です。

同じ公的年金であり、運営主体も社会保険庁と同一でありながら、同じ人が「国民年金の手帳番号」と「厚生年金の手帳番号」の複数の番号を持っていたのでは、事務も煩雑だし間違いも多くなります。

そこで設けられたのが基礎年金番号で、基礎年金番号が付された基礎年金番号通知書が年金制度に加入している人に送付されています。

基礎年金番号が送付されたのは、それ以前から国民年金または厚生年金に加入をしている人。

つけられた番号は平成8年10月~11月頃に、国民年金に加入していた人は国民年金の手帳番号が基礎年金番号になり、厚生年金に加入していた人は厚生年金の手帳番号が基礎年金番号になっています。

また、平成9年1月以降は青い手帳が発行されるようになりました。

手帳の表紙をめくってみると、そこに書かれている番号は「基礎年金番号」のみ。

平成9年1月以降、国民年金の手帳番号や厚生年金の手帳番号はなくなり、基礎年金番号1つに統一されています。

もっとも当時の運営主体は社会保険庁。社会保険庁が日本年金機構に変わったのは平成22年1月。

青い手帳でも手帳下部の印字が、社会保険庁から日本年金機構に変わったのは平成22年1月以降になります。

国民年金の年金手帳の色の違いのまとめ

時期名称発行者
昭和36年4月~昭和49年10月水色・肌色・カーキ色国民年金手帳厚生省
昭和49年11月~平成8年12月オレンジ色年金手帳社会保険庁
平成9年1月頃水色基礎年金番号通知書社会保険庁
平成9年1月~平成21年12月青色年金手帳社会保険庁
平成22年1月~青色年金手帳日本年金機構

年金手帳の色の違い2 厚生年金の場合

厚生年金の原型である労働者年金保険が誕生したのは昭和17年1月。

昭和19年6月に厚生年金保険と改称され、この時点から厚生年金被保険者証が交付されるようになっています。

また、昭和29年5月に厚生年金の大改正が行われたことで、新たな厚生年金被保険者証が交付されるようになっています。

私が年金相談の現場で直接に見たのは、昭和29年5月以降に発行された厚生年金被保険者証です。

この厚生年金被保険者証は、薄い黄緑色の用紙で、大きさは現在の年金手帳よりも少し小さくできています。

紙の厚さがそれほどないので、傷みやすいのが特徴的です。

その後にオレンジ色の年金手帳が生まれますが、多くの方は紛失を避けるため、あるいは傷みを生じさせないため、厚生年金被保険者証をオレンジ色の手帳に張り付けていることが多いようです。

昭和49年11月になると、国民年金と同じく厚生年金加入者にもオレンジ色の手帳が交付されるようになりました。

また基礎年金番号通知書の送付後は、これも国民年金と同じく青色の年金手帳が交付されるようになっています。

このあたりの流れについては、国民年金のところでお伝えしたので説明は省略させていただきます。

厚生年金の年金手帳の色の違いのまとめ

時期名称発行者
昭和17年1月~昭和19年5月記号番号通知票
昭和19年6月~昭和29年4月厚生年金保険被保険者証
昭和29年5月~昭和49年10月厚生年金保険被保険者証
昭和49年11月~平成8年12月オレンジ色年金手帳社会保険庁
平成9年1月頃水色基礎年金番号通知書社会保険庁
平成9年1月~平成21年12月青色年金手帳社会保険庁
平成22年1月~青色年金手帳日本年金機構

共済組合の場合

国家公務員・地方公務員・私立学校教職員は、各共済組合が年金に関わる業務を行っていました。

国民年金や厚生年金と同じく公的年金という位置づけですが、運営主体が異なっています。そのため、共済組合は独自の番号をつけていて、年金手帳もありませんでした。

平成9年に基礎年金番号ができたのを契機として、共済組合に加入する方にも基礎年金番号がつけられました。

ただし送られたのは基礎年金番号通知書のみで、その後も共済組合加入者には年金手帳は交付されていません。

また平成27年10月に、いわゆる「被用者年金一元化法」で、法律上は共済組合も厚生年金の中に入るようになりましたが、厚生年金と共済組合の一元化はあくまでも法律上のこと。

引き続き公務員の方などの年金業務は各共済組合が行っているので、一元化以降も共済組合の方などに年金手帳は交付されていません。

さいごに

この記事では、年金手帳の色をテーマにしてきました。また、年金手帳の色の違いで、大雑把ですが年金制度の歴史の変遷をたどってみました。

ところで年金手帳ですが、もう少しするとなくなる可能性があります。

青色の年金手帳を開けてみると、中には国民年金の記録や厚生年金の記録など様々なことが書けるようになっています。

たとえば、厚生年金から国民年金に移った場合は、お住いの市町村役場で手続きをします。手続をすると職員が年金手帳の中にその記録を書きます。

昔は記録を書く上で、そうしたページは必要でした。

しかし基礎年金番号ができてからは、国民年金も厚生年金も記録が基礎年金番号に入っているので、書く必要がなくなっています。

手帳の中には記録などを書く欄はあるものの、実際にはメモ帳程度の役割しか果たしていないのが現在の年金手帳です。

基礎年金番号ができて以降も青い年金手帳は発行され続けています。記録を書かないのであれば手帳は必要ないはずなのに、それでも手帳は発行されています。

もちろん年金手帳を作るのにはコストがかかります。2016年度には、年金手帳発行153万件・再発行74.5万件で合計2億7千万円の費用が掛かっています。

ほとんど意味をなさないのに、多額のコストがかかっているということで、年金手帳の廃止を含む法案が2020年3月3日に国会に提出をされました。

この記事を書いている段階では法律が成立してないので絶対とは言えませんが、2022年4月以降は年金手帳ではなく基礎年金番号通知書が発行される見込みとなっています。

また、これは推測の域を出ませんが、年金の各種業務の中にもマイナンバーが入り込んでいます。

マイナンバーで事務が滞りなくできるのであれば、基礎年金番号そのもの存在の可否も議論に上ってくる。

何とも言えませんが、そうした可能性はあるように思われます。

質問する人
質問する人
年金手帳の色の違いの意味が分かってよかったです。
答える人
答える人
今後は年金手帳がなくなるかもしれないですね。