年金相談では様々なご質問がありますが、その中で特に多いのが次の3つです。
1 私は年金をもらえるの
2 年金はいつからもらえるの
3 年金はいくらもらえるの
年金制度に加入されている方には、原則として毎年お誕生日の月に「ねんきん定期便」が送られています。
ねんきん定期便が始まったのは平成21年度なので、既に多くの方が10回以上、ねんきん定期便を受け取っていることになります。
ここで、ご紹介した質問の答えはすべてねんきん定期便に書かれています。ただ、3つの質問が途絶えることはありません。
年金制度は難しいので、ねんきん定期便を見る気がおきない。
ねんきん定期便を見てはいるが数字がたくさんあってよくわからない。
そうしたお客様が多いことから、多少は減ってはいるものの、こうしたご質問をされるお客様はまだ一定割合でいます。
この記事では3つのご質問のうち「年金はいつからもらえるの」にテーマを絞ってお伝えをしていきます。
年金はいつからもらえるのについては、その方が加入していた年金の種類(国民年金・厚生年金)・性別・生年月日でそれぞれ異なっています。
※ 年金は受給資格(平成29年8月からは原則10年)を満たさないと受け取ることはできません。この記事では既に受給資格を得ていることを前提にしていきます。
目次
年金はいつからもらえるの 国民年金の場合
国民年金から生まれる老齢給付は老齢基礎年金で、支給開始は65歳です。
繰上げや繰下げの仕組みがあるので、65歳より前、あるいは66歳より後に受け取る方もいますが、老齢基礎年金の支給開始年齢は65歳になります。
老齢基礎年金については、性別や生年月日で支給開始年齢が変わることはありません。
年金はいつからもらえるの 厚生年金の場合
厚生年金と共済組合は同じ公的年金と言いながらも、実施機関はそれぞれ別でした。
実施機関 | |
厚生年金 | 日本年金機構 |
国家公務員 | 国家公務員共済組合 |
地方公務員 | 地方公務員共済組合 |
私立学校の教職員 | 日本私立学校・振興事業団 |
平成27年10月に、いわゆる「被用者年金一元化法」により厚生年金と各共済組合は法律上一緒になりました。
例えば、共済組合に加入していた方が受け取る老齢給付は「退職共済年金」でしたが、一元化以降に受給権が発生した場合は「老齢厚生年金」と称するようになっています。
ただし、一元化されても実施機関は従来どおりですし、一元化されたといってもすべてが同じになったわけではありません。
その代表例と考えられるのが、支給開始年齢です。
元々、厚生年金と共済組合は支給開始年齢が異なっていましたが、一元化されてもその部分は変わっていません。
厚生年金の経過措置の仕組み
国民年金から生まれるのは老齢基礎年金で、支給開始年齢は65歳。
厚生年金から生まれるのは老齢厚生年金で、支給開始年齢は65歳。
「年金はいつからもらえるの?」その答えは、国民年金も厚生年金も65歳です。
国民年金は制度が始まったとき(昭和36年)から、支給開始年齢が65歳だったので問題はありません。
しかし厚生年金の歴史はさらに古く、60歳から老齢給付を受け取れる時期も長く続いていました。
そのため、60歳支給開始を急に65歳支給開始にするわけにはいかなかったので、経過措置の仕組みが作られています。
この経過措置の年金が「特別支給の老齢厚生年金」で、65歳以降の老齢厚生年金とは名称が異なっています。
1 受給資格期間を満たしていること(平成29年8月以降は10年)
2 厚生年金の加入期間が1年以上あること
1の受給資格期間を満たしていても、2が11か月以下だと特別支給の老齢厚生年金は支給されません。
この場合、65歳から老齢厚生年金として11か月分を受け取ることになります。
特別支給の老齢厚生年金はあくまでも経過措置の年金なのでやがてなくなります。そのなくなり方が、厚生年金と共済組合では異なっています。
それでは、厚生年金と共済組合の支給開始年齢をそれぞれにお伝えしていきます。
なお、経過措置は昭和16年4月2日生まれ以降の方に適用されていますが、このサイトでは「50歳台で考える老後のお金」で50代の方を中心に考えています。
そこで、経過措置も最初からではなく、昭和34年4月2日以降生まれの方に絞ってご紹介をしていきます。
なお、特別支給の老齢厚生年金には次のような特徴があります。
1 特別支給の老齢厚生年金は、2年刻みで支給開始年齢が引き上げられていきます。
2 特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金の加入月数とその間の給与や賞与に基づいて計算されます。厚生年金の期間が長かった人、給与や賞与が高かった人は金額も多くなります。
3 特別支給の老齢厚生年金は経過措置なので65歳でなくなりますが、65歳以降は老齢厚生年金と名称を変えて終身で支給されます。
会社員の方が受け取る特別支給の老齢厚生年金
会社員の方が受け取る特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は、男性と女性では異なっています。
結論を言うと、特別支給の老齢厚生年金は男性が早くなくなり、女性は遅くなくなります。
では、男性・女性別にそれぞれをお示ししていきます。
男性の場合
生年月日 | 特別支給の老齢厚生年金の開始年齢 |
---|---|
昭和34年4月2日~昭和36年4月1日 | 64歳 |
女性の場合
生年月日 | 特別支給の老齢厚生年金の開始年齢 |
---|---|
昭和33年4月2日~昭和35年4月1日 | 61歳 |
昭和35年4月2日~昭和37年4月1日 | 62歳 |
昭和37年4月2日~昭和39年4月1日 | 63歳 |
昭和39年4月2日~昭和41年4月1日 | 64歳 |
男性と女性で支給開始年齢が異なる理由
会社員の方が受け取る特別支給の老齢厚生年金の開始年齢は、男性と女性では異なっています。
年金関連の本を読んでもなかなかその理由は書かれていません。
ここでは、私が年金の勉強をしているときに先生から教えていただいた理由を記しておきたいと思います。
1 その昔、学校を卒業したら女性も就職したが結婚退職が多く加入期間が短かった。
2 その昔、男性と女性を比較すると女性の給料は低いことが多かった。
総じて老齢厚生年金は女性に不利なので、支給開始年齢は女性に有利にしたというものです。
ただ何れにしても特別支給の老齢厚生年金はなくなります。
男性で昭和36年4月2日以降生まれ、女性で昭和41年4月2日以降生まれの方に特別支給の老齢厚生年金はありません。
65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ることになります。
公務員・私立学校の教職員の方が受け取る特別支給の老齢厚生年金
公務員・私立学校の教職員の方が受け取る特別支給の老齢厚生年金に、男女の差はありません。
その理由は、会社員の女性とは異なり、結婚退職は少なかった、給与も男女差はなかったと考えられているためです。
年金相談をしていると決してそんなことはないと思うことも往々にしてありますが、この点に関しては一元化後も以前の仕組みがそのまま踏襲されています。
生年月日 | 特別支給の老齢厚生年金の開始年齢 |
---|---|
昭和34年4月2日~昭和36年4月1日 | 64歳 |
男性・女性とも36年4月2日以降生まれの方に特別支給の老齢厚生年金はありません。65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ることになります。
※ 一定の要件を満たした警察職員と消防署員の方には特別支給の老齢厚生年金のなくなり方についての優遇措置があります。
まとめ
年金額は毎年度見直しをされていきます。
毎年度の年金額は物価や賃金が影響しているので、物価・賃金が上がれば年金額は上がり、下がれば年金額は下がる。
今後の年金額は上がることもあれば、下がることもありますが、現在は物価や賃金だけでなく少子高齢化(マクロ経済スライド)も計算要素に入っています。
今後の年金額は、物価や賃金の伸びがあっても、マクロ経済スライドで抑制されていく。つまり、相対的な年金額は目減りをしていくことになります。
また、この記事でお示ししたとおり「年金はいつからもらえるの」というご質問に対して、50代の方には65歳ですとお答えすることも多いと思います。
年金の支給開始は65歳、金額も目減りをしていく。
過度に悲観的になる必要はありませんが、やはり早い段階から老後の備えとして、公的年金以外のお金も用意しておくのがおすすめと言えそうです。