公的年金には、老齢だけでなく障害や死亡に対する給付もあります。
その中で死亡に関しての給付は、国民年金からの遺族基礎年金、厚生年金からの遺族厚生年金が知られています。
ところで、国民年金だけにあり厚生年金にはない遺族に関する給付があります。
それが死亡一時金と寡婦年金で、国民年金だけにある制度であることから「国民年金独自の給付」とも言われてます。
この記事では、国民年金の死亡一時金を中心にお伝えをしていきます。
どうやら、死亡一時金は他の給付との選択、そして請求の時期がポイントになりそうです。
死亡一時金
最初に死亡一時金の支給要件についてお伝えします。
死亡一時金は国民年金独自の給付なので、亡くなった方の国民年金の加入状況が要件になります。
死亡一時金の要件
1 死亡一時金は、第1号被保険者として保険料を納めた月数と、4分の1納付、半額納付、4分の3納付期間の月数を合計した期間が36月以上ある人が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けずに亡くなったときに支給される。
※ 4分の1納付月数は4分の1月、半額納付月数は2分の1月、4分の3納付月数は4分の3月として計算する。
2 死亡一時金の対象になるのは、生計を同じくしていた遺族の中で優先順位の高い方に支給される。
※ 遺族の範囲と優先順位 ⇒ 1 配偶者、2 子、3 父母、4 孫、5 祖父母、6 兄弟姉妹
3 死亡一時金の額は保険料を納めた月数に応じて支給額が異なる。
納付済期間 | 一時金 | 納付済期間 | 一時金 |
36月以上180月未満 | 120,000円 | 300月以上360月未満 | 220,000円 |
180月以上240月未満 | 145,000円 | 360月以上420月未満 | 270,000円 |
240月以上300月未満 | 170,000円 | 420月以上 | 320,000円 |
※ 付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8,500円が加算。
4 死亡一時金は、遺族が遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されない。
5 死亡一時金と寡婦年金の両方の権利がある場合は、どちらか一方を選択する。
6 死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年。
この記事のテーマは「国民年金の死亡一時金は他の給付との選択や請求時期に注意しよう」ですが、ここでは特に請求時期に注意が必要です。
公的年金の時効は一般に5年ですが、それは年金だから。
死亡一時金は年金ではなく一時金なので、5年ではなく2年の短期消滅時効が適用されます。
寡婦年金
死亡一時金と他の年金との関係を再度整理してみたいと思います。
死亡一時金は、亡くなった方が既に老齢基礎年金・障害基礎年金を受けている場合は支給されません。
死亡一時金は、遺族が遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されません。
つまり、ここで「選択」は発生しません。
死亡一時金と選択の関係が発生するのは、死亡一時金と同じく「国民年金独自の給付」と言われる寡婦年金です。
それでは、次に寡婦年金の概要や要件などををお伝えします。
寡婦年金の概要
・ 寡婦年金は、夫が死亡したときの妻に支給される年金。
・ 寡婦年金は、60歳~65歳の有期年金。
※ 権利が60歳前に発生していても支給は妻が60歳に達した日の属する月の翌月から。
※ 夫が亡くなったとき、妻が65歳に達していたら寡婦年金は支給されない。
寡婦年金の要件
・ 夫死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上ある夫が死亡したこと。保険料免除期間は、全額免除を受けた期間、一部納付制度については定められた保険料を支払った期間が対象になる。
・ 妻は夫の死亡当時、夫によって生計を維持していたこと。(妻の年収要件等あり)
・ 妻は夫との婚姻関係(事実婚を含む)が10年以上継続していたこと。
・ 夫は障害年金の受給権を有したことがないこと、又は老齢基礎年金の支給を受けていないこと。
寡婦年金の額
・ 寡婦年金の年金額は、夫の第1号被保険者期間より計算した老齢基礎年金の4分の3の額になります。
寡婦年金の失権
寡婦年金の権利は次の何れかに該当したときになくなります。
・ 65歳に達したとき
・ 死亡したとき
・ 婚姻をしたとき(事実婚を含む)
・ 養子となったとき
・ 妻自身が老齢基礎年金の繰上げをしたとき
死亡一時金と寡婦年金の選択
国民年金独自の給付と言われる、死亡一時金と寡婦年金は両方の権利が発生しても何れか一方しか受け取れません。
もっとも、寡婦年金はその文字のとおり「寡婦」だけに権利が発生しますし、その妻が65歳を過ぎていたら権利も生まれません。
つまり、死亡一時金と寡婦年金の選択を考えるのは、夫の死亡時に65歳に達していない妻ということになります。
さて、死亡一時金は1回しか出ない一時金で金額も低い。
一方、寡婦年金は最長5年間とはいえ年金。
一般的には、寡婦年金と死亡一時金を比較すると、寡婦年金を選択することが有利に思われます。
しかし、現実には妻の置かれた状況により異なってきます。
たとえば、
・ 妻の年齢が65歳に近い場合
・ 妻が再婚を考えている場合
・ 妻が障害年金を受けている場合
・ 妻の特別支給の老齢厚生年金の方が高い場合
・ 妻が遺族厚生年金を受けられるような場合
など、ケースによっては寡婦年金ではなく死亡一時金が有利な場合もあります。
一つ一つのご説明をすると、記事が長くなり分かりにくくなってしまうので詳細は省かせていただきますが、死亡一時金と寡婦年金の選択は案外と難しいものがあります。
ただ最終的に死亡一時金を選ぶ場合、そこには2年という時効があるので注意が必要です。
さいごに 相談窓口はどこ
国民年金や厚生年金の事務を行っているのは全国各地にある「年金事務所」ですが、国民年金に関する事務の一部は市区町村役場で行っています。
死亡一時金も寡婦年金も国民年金独自の給付なので請求手続きはお住いの市区町村役場で可能です。
さて、死亡一時金と寡婦年金について日本年金機構のHPを確認すると、請求書は『住所地の市区町村役場、またはお近くの年金事務所および街角の年金相談センターの窓口に備え付けてあります。』とあります。
これを読む限り、手続は市区町村役場だけでなく年金事務所および街角の年金相談センターでも可能と読み取れます。
実際のところ、選択に悩むことがなければ市区町村役場で問題はないと思います。
しかし、死亡一時金と寡婦年金の選択があるようなときは、年金事務所および街角の年金相談センターへ行くことをおすすめしたいと思います。
死亡一時金と寡婦年金の選択は案外と難しいものなので、国民年金や厚生年金の情報をしっかりと持っていて、知識や経験の豊富な方がいる年金事務所等の方がより適切です。
なお、年金事務所はどこと指定されているわけではなく、行きやすいところで構いませんが基本的に予約制になっています。
希望する年金事務所に電話予約をし、日時の予約と必要書類を確認し、お出かけになってください。
※ このサイトは人生100年時代を背景に「50歳台で考える老後のお金」をテーマにしています。基本的には長生きを前提にした記事を書くようにしていますが、万が一ということを考えこの記事を作成しました。本当に万が一の時、この記事を参考になさってください。