2020年(令和2年)4月1日、国民年金第3号被保険者の認定要件に国内居住要件が追加されました。
もっとも、国内居住要件は絶対的なものではなく、いくつかの例外的な特例要件も設けられています。
この記事では、従来の国民年金第3号被保険者の認定要件、追加された国内居住要件と対応の方法などを簡単にご紹介していきます。
目次
国民年金第3号被保険者とは
第3号被保険者は「第2号被保険者の配偶者であって、主として第2号被保険者の収入により生計を維持するもののうち、20歳以上60歳未満の者」と規定されています。
この文章のうち第2号被保険者とは、「被用者年金各法の被保険者、組合員又は加入者」とされています。
被保険者とは会社員として厚生年金に加入する人、組合員とは国家・地方公務員として厚生年金に加入する人、加入者とは私立学校の教職員として厚生年金に加入する人です。
第3号被保険者は、まず第2号被保険者の配偶者であることが条件。さらに、第2号被保険者の収入により生計を維持される、20歳以上60歳未満の人が該当をします。
なお、国民年金第3号被保険者の規定があるのが、国民年金法第7条第1項第3号であることから、一般的には第3号被保険者と言われています。
そして、上記のうち生計維持の要件については政令などで定められることになっています。
国民年金第3号被保険者の生計維持要件とは
では、第3号被保険者の生計維持要件とはどのようなものでしょうか。
原則的な生計維持要件としては
第2号被保険者と同一世帯に属していること
年間収入が130万円未満(障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害のある場合は180万円未満)であること
年間収入が第2号被保険者の2分の1未満であること
の3つを満たしていることが必要です。
ただし、同一世帯に属していない場合でも認定されることもあれば、年間収入が第2号被保険者の2分の1未満でなくても第2号被保険者の年間収入を上回らなければ認定されることもあります。
国民年金第3号被保険者に国内居住要件を追加
前述の通り、従来の第3号被保険者の認定要件は3つでした。
第2号被保険者の配偶者であること
第2号被保険者の収入により生計を維持される人
20歳以上60歳未満の人
言い換えると第3号被保険者の認定要件に国内居住要件はありませんでした。
この点が2020年4月1日から変わり、第3号被保険者の認定要件に国内居住要件が加わります。
ただし、急に国内居住要件を加えると大きな混乱が生じます。そこで、同時に設けられたのが特例要件で、次の5つが該当をします。
1 外国に留学をする学生
2 外国に赴任する第2号被保険者に同行をする者
3 就労以外の一時的な渡航者(観光・保養・ボランティア活動など)
4 第2号被保険者の海外赴任期間に当該被保険者との身分関係が生じた者(上記2と同等と認められた者)
5 その他、日本国内に生活の基礎があると認められる者
※ 2の「同行をする者」はあいまいな表現ですが、厚生年金だけでなく健康保険も同様の取り扱いをするためのものと考えられます。
この特例要件を見る限り、第3号被保険者に国内居住要件を追加するといっても、従来と大きく変わるものではないと考えられます。
では、どうして第3号被保険者に国内居住要件を追加したのでしょうか。
このあたりの資料を見つけることができなかったので、はっきりとしないものの参考になりそうなのが国民年金法第7条第1項第1号の規定です。
第3号の規定から第3号被保険者の呼称が生まれたように、第1号の規定から第1号被保険者が生まれています。
第1号被保険者の規定を要約すると「第1号被保険者は第2号・第3号被保険者以外で、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者」です。
第1号被保険者には国内居住要件があるのに、第3号被保険者には国内居住要件がない。こうしたことから、第3号被保険者に国内居住要件が追加されたのではないでしょうか。
なお、特例要件は国内居住要件の例外を示すものであることから「海外特例」と称することもあります。
国民年金第3号被保険者の特例届出
特例要件は届出をして認定されることが必要です。この届出は、第2号被保険者の勤務先を経由して行います。
なお、特例要件に該当しない場合は、第3号被保険者の資格を喪失することになりますが、この時の資格喪失の手続きも勤務先を通して行うことになります。
※ 第3号被保険者の資格を喪失した方で日本国籍を有する方は、国民年金に任意加入することができます。
特例認定を受けた方の帰国後の手続き
日本に帰国すると特例ではなくなります。第3号被保険者に該当する方は改めて勤務先を経由して届出をする必要があります。
まとめ
この記事では、従来の国民年金第3号被保険者の認定要件、追加された国内居住要件と対応の方法などを簡単にご紹介してきました。
今回の見直しは筆者の推測にすぎませんが、第1号被保険者との均衡性を保つためのものと思われます。
第3号被保険者に国内居住要件は追加されたものの、実態は従来と変わらないようです。
また、届出も勤務先を経由してとなっているので、該当する方自身の負担もそれほど多くはないと思われます。
ただ、こうした見直しがあったとき、見直しされたことを見逃すこともあります。該当する方は、届出の有無の確認だけはしておくことが望まれます。