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年金制度改革関連法【2020年5月成立】の経緯と課題とは!

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この記事では、2020年5月に可決・成立した年金制度改革関連法の、成立まで経緯や残された課題をわかりやすくお伝えしていきます。

公的年金は時々の環境変化に応じて、何回にもわたり大きな改正が行われています。

2020年3月に国会に提出され、同年5月に可決・成立した年金制度改革関連法も比較的大きな改正と言えるのではないでしょうか。

今回の年金制度改革関連法の趣旨は、働き方の多様化や高齢期の長期化に対応するための見直しが中心です。

そのため、既に老齢の年金を受け取っている方というよりも、今後、受け取るであろう若い世代を対象にした見直しが多いのが特徴です。

また、今回の見直しは抜本的な見直しというよりも、趣旨を反映させるために細かな見直しが多いような印象を受けます。

もっとも年金制度改革関連法で、すべての課題が解決されたわけではありません。

もちろん、年金制度を恒久的に維持するための対策が法律で決められたのは確かですが、実際にはまだまだ課題が残されているようです。

そこで、この記事ではどのような経緯で2020年の年金制度改革関連法が作られたのか、そして年金制度改革関連法で積み残された課題などをご紹介していきます。

内容的には奥が深く、とても難しい内容ですが、できるだけわかりやすくお伝えしていきたいと思います。

質問する人
質問する人
2020年の年金制度改革関連法では様々な見直しが行われているみたいですね。
答える人
答える人
確かにその通りですが、年金制度にはまだまだ多くの課題が残されています。

年金制度改革関連法のきっかけとなった財政再検証

年金制度を維持するために、少なくとも5年に1回行われるのが財政再検証です。

直近の財政再検証は2019年に行われ、その結果を受けて2020年の年金制度改革関連法が作られています。

財政再検証で行なわれるのは、年金財政の今後の見通しの作成と、マクロ経済スライド終了年度の見通しの作成です。

年金は毎年度金額の見直しが行われます。毎年度の年金額は、原則的には物価や賃金の上昇や下降によって変わります。

しかし、少子高齢化で年金の保険料を支払う人が少なくなり、年金を受け取る人が多くなったため、対策が必要になってきました。

物価や賃金が上がったとしても、少子高齢化で年金額を抑制する必要がある。この少子高齢化を年金額計算に加味したのが、マクロ経済スライドです。

ただ、マクロ経済スライドはあくまでも臨時的措置なのでやがてはなくなります。

では、いつなくなるのか。

まだまだ、はっきりとはしていませんがマクロ経済スライドが最終的に終了するのは、2040年代半ばが見込まれています。

さて、ここで出てくるのが所得代替率(しょとくだいたいりつ)という言葉です。

所得代替率は、現役世代の賃金に対する年金受給世代の年金額を表す率で、現在は概ね60%程度になっています。

この所得代替率を下げる役割を果たすのがマクロ経済スライドです。

ただし、あまりに引き下げてしまうと老後の生活を維持することが難しくなるため、マクロ経済スライドを実施しても所得代替率は50%を維持することを目的としています。

マクロ経済スライドのまとめ

年金財政を維持するために、現在の所得代替率60%を将来は50%程度まで引き下げる必要がある。

所得代替率50%程度にするために導入されたのがマクロ経済スライドである。

老後の生活を維持するために所得代替率は50%程度にとどめることが必要である。

マクロ経済スライドは恒久的な仕組みではなく、2040年代半ばには終了する見込みである。

そして、上記の状況を見極めるために実施されたのが2019年の財政再検証です。

財政再検証は、長期的な経済状況に基づいて行われます。もっとも長期であるがゆえに、様々なケースが想定されます。

財政再検証では大きく6ケース、さらにケースごとにも複数の前提を設けてさまざまな推計をしています。

したがって、そのどれを取るかによって将来予測も大きく変わる可能性があります。

財政再検証で浮かび上がった課題

財政再検証の結果、ある課題が浮かび上がってきました。

先ほど財政再検証では大きく6ケースに分けたとお伝えしましたが、この中でより重視されたのがより平均に近いと考えられた「中位ケース」です。

中位ケースはさらに6つに分類されていますが、とりわけ注目されたのが2009年と2014年の財政再検証と前提が似ている「出生中位・死亡中位」による推計です。

では、この前提で浮かび上がった課題は何でしょうか。

「出生中位・死亡中位」では、全体的な所得代替率は2019年の61.7%であるのに対して、2047年度以降は50.8%に低下するという推計が行われました。

所得代替率は下がっているものの50%は維持されているので、この点から見たら年金財政は安定性が保たれていると考えられます。

しかし、公的年金は国民年金から支給される基礎年金と、厚生年金から支給される厚生年金があります。

基礎年金も厚生年金も公的年金ではあるものの、お財布は別なのでそれぞれの財政状況を考える必要があります。

そうすると、基礎年金と厚生年金の所得代替率は次のようになることがわかりました。

基礎年金厚生年金全体
2019年の所得代替率36.4%25.3%61.7%
2047年の所得代替率26.2%24.6%50.8%

※ マクロスライド終了の時期は、基礎年金と厚生年金では異なります。この推計では、基礎年金の終了時を2047年、厚生年金の終了時を2025年と見込んでいます。

一見してわかる通り、全体として所得代替率50%が維持される見込みであるものの、基礎年金に関しては大幅な低下が見込まれています。

所得代替率全体が概ね60%が50%に下がるということは、すべての人の年金が相対的に減っていくことを意味しています。

しかし、国民年金の期間しかなく65歳からの老齢基礎年金しか受けられない自営業などの方は、単純に60%が50%に下がるというわけでなく、老後の生活は今よりも一段と厳しくなることが推測されます。

所得代替率だけではありませんが、そうした諸事情を勘案して様々な見直しが行われたのが2020年の年金制度改革関連法です。

課題を解消するための対策

基礎年金は、2019年の所得代替率36.4%が、2047年には26.2%に下がることが見込まれています。

これは割合でいえば、28%の減額になります。(26.2%÷36.4%×100=72%、100%-72%=28%)

この割合を引き上げるために最も効果があるのはマクロ経済スライドの緩和です。

しかし緩和をすると、基礎年金の支給額が多くなり、国民年金のお財布がどんどんと枯渇をしていきます。

そこで、2020年の年金制度改革関連法でいくつかの対策が盛り込まれています。

年金制度改革関連法で盛り込まれた対策

国民年金(基礎年金)の財政の脆弱性を補うため、2020年の年金制度改革関連法で盛り込まれた対策としては次のものがあります。

1 被用者保険の適用拡大

被用者保険の適用拡大とは、厚生年金に加入する人を増やすということです。

被用者保険の適用拡大は、保険者の立場からすれば厚生年金にも国民年金にも保険料収入が入ってくることを意味します。

一方、厚生年金に加入する人は、老後に老齢基礎年金と老齢厚生年金が受けられることを意味しています。

被用者保険の適用拡大は、直接的に基礎年金の所得代替率の改善に大きく寄与するわけではありませんが、実質的に老後の年金額を増やす手段になります

規模の見直し施行予定被保険者の数
501人以上⇒100人超規模2022年10月45万人の増
100人超規模⇒50人超規模2024年10月20万人の増

2 在職老齢年金制度の改善(在職定時改定の導入)

老齢厚生年金を受けられる人が、厚生年金に加入をしていることを「在職」と言います。

老齢厚生年金は、老後の所得保障という性格を有しているので、厚生年金に加入をして年収が相当程度あるのなら老齢厚生年金は支給をしなくても差し支えないだろう。

これが現在の年金制度の考え方で、老齢厚生年金は在職だと名称が「在職老齢年金」になります。

在職老齢年金の仕組みは、65歳未満の方に適用されるものと、65歳以上の方に適用されるものの2つがあります。

今回はどちらも見直しが行われていますが、今後に大きく影響を及ぼしそうなのが65歳以上の方に適用される在職定時改定の導入です。

在職定時改定が導入されても、直接的に基礎年金の所得代替率の改善につながるわけではありませんが、老齢厚生年金の支給が従来よりも有利になります。

3 受給開始時期の選択肢の拡大

老齢基礎年金も老齢厚生年金も支給開始は原則として65歳ですが、実際の受給開始時期を選択することができます。

現在の選択は60歳から70歳までで、65歳前に受け取り開始することを繰り上げ、66歳以降に受け取り開始することを繰り下げと言います。

今回の見直しは、従来70歳までとされていた繰り下げを、75歳まで拡大するものです。

65歳から受け取れる年金を繰り下げすると、年金額は増額され、長生きすることでより多くの年金を受け取ることができます。

年齢繰下げ増額率
65歳100.0%
70歳142.0%
75歳(見直し後)184.0%

財政再検証の推計が正しいと、今後の老齢基礎年金は目減りをしますが、繰り下げにより増やすことが可能となります。

年金制度改革関連法で残された課題

2019年の財政再検証の結果、推計とはいえ基礎年金の所得代替率が大幅に低下することがわかりました。

そうした結果などを受けて2020年の年金制度改革関連法ができたわけですが、これで課題のすべてが解決したわけではありません。

そこで、ここからは年金制度改革関連法で残された課題についてお伝えをしていきます。

残された課題1 被用者保険の適用拡大

2020年の年金制度改革関連法で、被用者保険の適用拡大をして厚生年金に加入する人を増やすことになりました。

もっとも、適用規模拡大は50人超の企業に限られています。

元々の案では、被用者保険の適用拡大に企業規模の要件はありませんでした。

しかし、厚生年金保険料は労使折半で、企業も半分を負担する必要があります。小さな企業にも適用拡大を及ぼすと、財政的負担が大きすぎるということで、企業規模の要件が設けられました。

今回の見直しで最終的に厚生年金に加入する人が65万人の増と見込まれています。

しかし、仮に企業規模要件がなければ125万人の増が見込まれていただけに、企業規模要件の設定で効果が半分程度になっています。

企業規模要件の更なる引き下げ、あるいは撤廃については、今後も議論されるべき課題になっています。

残された課題2 国民年金加入期間の延長

課題1の被用者保険の適用拡大は、50人超という要件が設けられたものの法律の中に盛り込まれています。

一方、国民年金加入期間の延長については法案にさえ盛り込まれていません。

国民年金加入期間の延長とは、現在20歳から60歳までの40年間とされている国民年金の強制加入期間を、20歳から65歳までと5年間延長するものです。

延長した5年間も老齢基礎年金額に反映をさせることができれば、加入期間が長くなる分、老齢基礎年金の額も増え所得代替率も改善されます。

しかし、国民年金加入期間の延長については財政面から見て大きな問題があります。

現在、基礎年金の財源の半分は納付されている国民年金保険料、あとの半分は国庫負担です。

5年間強制加入期間を延長すれば、国民年金保険料による収入は増えますが、同時に国庫負担も増えることになります。

そうすると消費税率をさらに引き上げする必要がでてきます。消費税率は引き上げが行われたばかりで、さらに引き上げるというのは実際問題としてかなり厳しいものと思われます。

強制加入期間の40年間は、延ばす必要性が高いと考えられています。しかし財政的な側面から、今回の法律に入れることができなかったということではないでしょうか。

まとめ

2020年5月に年金制度改革関連法が可決・成立しました。

法律の趣旨は、働き方の多様化や高齢期の長期化に対応するための見直しということですが、直接的には2019年の財政再検証がきっかけになっています。

財政再検証では、年金財政が概ね予定どおりに推移しているものの、基礎年金については所得代替率の大幅な低下という課題が現れました。

今回の年金制度改革関連法では、そうした課題に対する見直しがいくつも行われたのは確かですが、同時に残された課題も浮き上がってきました。

この記事の最後では、残された課題の中でも2つの大きなものをご紹介してきました。

ところで年金財政については、まだ考慮されていない要因があります。

それが、いわゆる「コロナ禍」です。

新型コロナウィルスが年金財政に与える影響がわかってくるのは、2020年5月に年金制度改革関連法が可決・成立した後のことになるはずです。

たとえば、今回の年金制度改革関連法では被用者保険の適用拡大が盛り込まれていますが、この見直しは企業の負担が大きくなることも意味しています。

国会審議の中でも議論されたようですが、コロナ禍で企業の財政状況が大きく傷んだ状態で、見直しを法律通りに進めることができるのか不透明な状況になりつつあります。

もしかしたら、今わかっている課題だけでなく、これから全く別の課題が出てくるかもしれないですね。

2020年の年金制度改革関連法は、今後の変更にも注意が必要なようです。

質問する人
質問する人
年金制度にはまだまだ課題が残されているんですね。
答える人
答える人
これからも継続的な年金制度の見直しが必要です。