はっきりとした記憶はありませんが、2000年に入ってすぐの頃から聞かれるようになったのが「貯蓄から投資」です。
また、確定拠出年金(iDeCo含む)やNISA(積立NISA含む)など、投資を後押しするような制度も続々と誕生しています。
もっとも、こうした新しい制度に対しては、ハードルが高いと利用を避けている方も多いようです。
この記事では、これから投資を始めてみようと考えている投資初心者の方を対象に、実際に投資を行うまでの手順を事例つきでお伝えしていきます。
目次
投資初心者の方におすすめの手順
私が投資初心者の方におすすめする手順は、次の6つのステップです。
1 投資の目的と目標とする金額を考える
2 投資できる金額を把握する
3 リスク許容度を意識する
4 シュミュレーションをしてみる
5 実際に投資を行う
6 定期的にメインテナンスを行う
それでは、一つずつ簡単にご案内していきます。
投資の目的と目標とする金額を考える
投資初心者の方におすすめする手順の第一は、投資の目的と目標とする金額を考えることです。
目的がなければ絶対にダメというわけではありませんが、目的があれば目標とする金額も見えてきます。
目的はその方によって異なりますが、投資の原則の一つに「長期投資」があります。
したがって、ここで考える目的は目の前のことではなく、少しばかり遠い将来の目的になります。
10年程度、あるいは10年以上先を見据えた目的をお考えになってください。
また、このサイトは「50歳台で考える老後のお金」をテーマにしています。
50代の方でも、それぞれの目的は異なるとは思いますが、10年以上先を念頭に置くと投資の目的を「老後のお金」の準備と考える方も多いと思います。
仮に老後のお金の準備が目的だとしたら、次に目的までの年数と、目標とする金額をお考えになってみてください。
投資できる金額を把握する
投資初心者の方におすすめする手順の第二は、投資できる金額を把握することです。
では、どのようにして求めればよいのでしょうか。
求め方はさまざまにあり、どれが正解ということもありません。
たとえば、直感的に毎月1万円なら投資に回せるとお考えであれば、それでも差支えはありません。
また、昨年1年間を振り返り、1年間の総収入・総支出から実際に投資に回せる金額を把握することもできます。
何よりも大切なことは継続することです。
先月は2万円だったが、今月は1万円しか投資に回せなかった。これも仕方がないことです。
そして、この段階では無理しないことも大切です。
余裕資金が1万円しかないことが分かっているのに3万円を投資に回してしまうと、今の生活に相当の影響をおよぼしてしまいます。
第二段階で最も大切なのは、継続を最優先にすること、そして無理してまで余裕資金を作ろうとしないことです。
リスク許容度を意識する
投資初心者の方におすすめする手順の第三は、リスク許容度を意識することです。
預貯金と異なり、投資目的の金融商品は大なり小なりリターンとリスクを伴います。
また、ローリスク・ローリターンあるいはハイリスク・ハイリターンはあっても、ローリスク・ハイリターンの金融商品は存在しません。
リスク許容度を図る手段は、インターネット上でいくつも見つけることができます。
それぞれに優れた点はありますが、もっともシンプルに考えると「元本割れをしても解約しないで投資を続けることができるか」という点が、リスク許容度を意識するうえでは大切です。
投資は長期が基本です。元本割れをしたらすぐ解約するようなタイプの方は、そもそも長期投資が苦手な方と考えることができます。
リスク許容度は様々な視点から考えることができますが、元本割れをしても解約しないで投資を続けることができる人は、そこそこにリスク許容度が高い人。
続けることができない人は、リスク許容度が低い人と考えることができそうです。
そもそもどんなことがあっても絶対に損はしたくないという人は、もしかしたら投資は向いていないのかもしれません。
そんなタイプの方は、投資をしない、あるいは金額を抑えて投資をすることがおすすめです。
なお、投資を考えている方は、次に直感でよいので1年で何パーセントの利益を得ていきたいのかをお考えになってください。
たとえば、リスク許容度が低いと考える方は年1%の利益を目標とする。リスク許容度が高い方であれば年5%の利益を目標とするなどです。
シュミュレーションをしてみる
ここまでをまとめると、手順の第一は投資の目的と金額を考えることでした。投資の目的を決めたうえで、目的までの年数・目標とする金額を考えます。
手順の第二は、投資できる金額を把握することです。投資できる金額とは、余裕資金であり、無理なく継続してできる金額です。
手順の第三は、リスク許容度を意識することです。リスク許容度を判断したうえで、年何パーセントの利益を目標とするかを考えます。
ここまで進んだら次にすることは、シュミュレーションをしてみることで、ここで使うのが「係数表」です。
係数表は、資産運用でさまざまな金額を求めるときに使います。係数表は6種類ありますが、ここでご紹介するのは「年金終価係数」です。
年金終価係数表は、毎年一定の金額で一定の利率で運用を続けた場合、将来はどの程度の金額になるかを計算するものです。
年金終価係数
1% | 2% | 3% | 4% | 5% | |
1年 | 1.000 | 1.000 | 1.000 | 1.000 | 1.000 |
5年 | 5.101 | 5.204 | 5.309 | 5.416 | 5.526 |
10年 | 10.462 | 10.950 | 11.464 | 12.006 | 12.578 |
15年 | 16.097 | 17.293 | 18.599 | 20.024 | 21.579 |
20年 | 22.019 | 24.297 | 26.870 | 29.778 | 33.066 |
事例で金額を具体化
それでは一つの事例で、金額を求めてみます。
事例 Aさん
Aさんは55歳で、10年後の65歳から老後生活に入りたいと考えています。
また、Aさんは毎年36万円(月3万円)のお金を投資に回し、年利4%で運用。10年後に500万円程度のお金を作りたいと考えています。
Aさんの希望通り行うと、10年後にはどの程度のお金が作られているかを計算してみます。
1年当りの投資金額 | 36万円 |
---|---|
予定運用利率 | 年4% |
運用期間 | 10年 |
年金終価係数 | 12.006(上記の表で4%と10年が交差する数値) |
15年後の見込み額 | 432万円(36万円×12.006) |
Aさんが目標とする金額は500万円。一方、前提条件のまま計算すると432万。少し不足することがわかります。
それでは、次に予定運用利率年4%、運用期間10年を変えずに、目標500万円を達成するための1年当りの投資金額を求めます。
この計算も年金終価係数表で求めることができます。ただし、ここで行うのは割り算です。
目標額500万円 ÷ 年金終価係数12.006 ≒ 416,458円
416,458円 ÷ 12月 = 1ヶ月当り34,704円 ≒ 35,000円
月30,000円では目標額に達しませんが、月35,000円ならば目標額が達成できそうです。
※ 運用の過程で税が徴収されることもあるので、端数を切り上げています。
目標金額を達成するためには、この他にも運用期間を長くする、運用利率を高くする方法もありますが、最善の策は1年当りの投資金額を高めることです。
今回の試算では、月30,000円が35,000円になっています。
金額の引き上げは決して楽なものではありませんが、月々の無駄な出費を洗い出すことによって5,000円の引き上げが可能であれば、第一に考えたいところです。
どうしても困難な場合は、運用年数を長くするのもよいかもしれませんが、運用利率は変更しないことが望まれます。
実際に投資を行う
1年当りの投資金額、予定運用利率、運用期間、将来の見込み額が決まったら、次に行うのが実際に投資を行うことです。
そして、実際に投資を行う段階で考えたいのが「分散投資」です。
投資のための金融商品は多数存在しますが、ここでは投資信託を使った投資をご案内していきます。
投資信託を使う理由としては
投資信託は、種類が豊富で性格も多様なので分散投資ができる。
投資信託は、長期投資に向いた金融商品である。
確定拠出年金(iDeCo含む)やNISA(積立NISA含む)などに含まれる商品は、投資信託が中心である。
などがあげられます、
投資信託以外を否定するつもりはありませんが、投資信託は長期投資や分散投資に向いているので、投資初心者の方に対しては投資信託をおすすめしておきたいと思います。
日本で販売されている投資信託は約6,000本に及ぶといわれています。それぞれに個性はありますが、大きく分けると次の5つに分類することができます。
国内株式を中心とした投資信託
国内債券を中心とした投資信託
海外株式を中心とした投資信託
海外債券を中心とした投資信託
その他を投資対象とする投資信託
次にしたいのが、銀行や証券会社などの選択です。
もちろん複数の金融機関を選ぶことも差し支えはありませんが、月々の投資金額はそれほど多くはないので、管理の面からも単一の金融機関を選ぶほうが得策です。
金融機関を選んだら、その金融機関が取り扱う投資信託を確認します。
多くの金融機関は複数の投資信託を扱っているので、上記のそれぞれの投資信託を見つけられると思います。
※ 取扱本数が少ない、購入したい投資信託がないような場合は、他の金融機関の利用を考えます。
投資を行う段階で考えたいのが「分散投資」なので、ここで複数の投資信託をピックアップします。
仮に毎月の投資金額が3万円だとしたら、数本を購入するのがよいのではないでしょうか。
また、バランスのとり方ですが、各投資信託を調べていくと過去の騰落率のデータを確認することができます。
騰落率は過去の実績で、将来を約束したものではありませんが、参考にすることはできます。
たとえば、B銀行で探したら
国内株式を中心とした投資信託 ⇒ 過去の騰落率4%
国内債券を中心とした投資信託 ⇒ 過去の騰落率1%
海外株式を中心とした投資信託 ⇒ 過去の騰落率6%
海外債券を中心とした投資信託 ⇒ 過去の騰落率5%
であることがわかりました。
仮に、投資金額月3万円、運用利率年4%だとしたら、次に組み合わせを考えます。
あくまでも一つの事例ですが、国内債券を中心とした投資信託、海外株式を中心とした投資信託、海外債券を中心とした投資信託に1万円ずつ投資をすることで運用利率4%を期待することができます。
※ 1%+6%+5%=12%(騰落率の合計)、12%÷3=4%
金融機関などを選ぶ
扱っている商品を確認する
ピックアップした商品の騰落率などの情報を調べる
ピックアップした商品の中からバランスを考えて商品を購入する
さいごに 定期的にメインテナンスを行う
実際に投資を行っても、それでおしまいではありません。投資は、運用する期間が長期に及ぶのでメインテナンスが必要です。
もっとも、ここでも投資信託の特長を享受することができます。投資信託は株式などと比べれば、それほど値動きの幅は大きくありません。
投資信託には運用目標とすべきベンチマークが設定されています。
たとえば、国内株式を中心とした投資信託はTOPIXや日経平均株価をベンチマークとしていることが多いので、個別の株式ではなくこれらの指標を理解していれば、投資信託の値動きそのものをある程度は判断できます。
私の場合、購入した投資信託の状況を確認するために確認作業を行い、必要に応じてメインテナンスを行っています。
では確認作業はどの程度の頻度で行っているのでしょうか。
私が必ず行うのは年末です。年末の確認作業で1年間の動向を把握します。
あとは、政治や経済に大規模な変化があったときですが、せいぜい年に1回~2回程度。結局、1年の中で確認をするのは2回~3回です。
確認が終わると次にメインテナンスです。
たとえば、全体のバランスが大きく崩れた場合などは、既存の投資信託を解約したり、新たに購入する投資信託の金額の割合を変えてメインテナンスを行うことはあります。
ただし、私はめったにメインテナンスは行いません。これまで投資信託とは15年以上付き合っていますが、実際にメインテナンスを行ったのは数回程度です。
これが良いとは言いませんが、私の場合はこの方法で結果として目標金額を達成しています。
最後のメインテナンスについては、人それぞれだと思います。
ただ、それ以外の手順は、特にこれから投資を始めてみようと考えている投資初心者の方の参考になるかと思われます。
投資初心者の方は、いろいろな情報を仕入れ取捨選択をしたうえで、ぜひ、投資をすることをご検討になってください。
さらに言えば、単純に投資信託ではなく、確定拠出年金(iDeCo含む)やNISA(積立NISA含む)なども有用な選択肢になります。
合わせて、こちらも視野に入れていただければと思います。