ファイナンシャルプランナーの勉強をしていると必ず出てくるのが「人生の三大資金」という言葉です。
住宅資金・教育資金・老後資金が人生の三大資金と言われています。
もちろん、すべての人が人生三大資金に直面するわけではありませんが、三大という言葉のとおり何れも多額のお金を必要としています。
ところで、このサイトは主に50代の方を対象にしています。
50代の方は働き盛りである反面、いろいろなものにお金がかかる時期で、とりわけ住宅を購入した方は、住宅ローンの支払いに苦労されていることも多いのではないでしょうか。
住宅は高価な買い物で、現金で全部を支払える方は決して多くありません。ほとんどの方が、多額の借入金、長い期間のローンを組まれていると思います。
さて老後のお金を考えるとき一つの鉄則があります。それは老後生活に入るまでに、ローンを終わらせておくということです。
現在60歳で仕事を辞め老後生活に入るという方は少なくなっています。65歳、あるいは70歳以降も頑張るという方も最近は多くなっています。
ただし、仕事は続けるとしても収入が減ってしまうことも多いようです。また、いつかは仕事による収入が途絶えてしまう時期は来てしまいます。
昔のように仕事を辞める60歳までに住宅ローンを完済するという時代ではありませんが、それでもできるだけ早く住宅ローンを終わらせてしまう。
少なくとも、そうした検討はしておきたいところです。
そこで、この記事では住宅ローン借り換えの目安や繰り上げ返済の基本的なポイントをご紹介することにしました。
ご紹介するのは基本的な部分にとどまりますが、住宅ローンの借り換えや繰り上げ返済を考えている方の参考になれば幸いです。
目次
住宅ローンの3要素
厳しい言い方ですが住宅ローンはあくまでも借金です。
元本だけでなく利息も返済しなければならないので、実際に借りた金額よりも、はるかに多額のお金を返さなければいけない場合もでてきます。
ところで、住宅ローンには3つの要素があります。それは、借入金額・金利・返済期間の3つの要素です。
ここでは、住宅ローンの3要素について簡単にお伝えしていきます。
借入金額
利息は元本に基づいて計算をされます。
借入金額が多ければ、発生する利息も多くなり、返済総額も多くなります。
金利
利息は元本に基づいて計算をされます。
金利が高ければ発生する利息も多くなり、金利が低ければ発生する利息は少なくなります。
返済期間
利息は元本に基づいて計算をされます。
返済期間が長いと月々の支払額は少なくなりますが、別の言い方をすると元本の減り方が遅いということになります。
元本の減りが遅いと長い期間利息を支払うことになるので、総支払額は多くなります。
逆に元本の減りが早ければ、利息の支払期間も短くなるので総支払額は少なくなります。
住宅ローン3要素のまとめ
住宅ローンは借入金額・金利・返済期間の3つの要素で構成されます。
したがって、住宅ローンの軽減を考える場合は、この3要素に対する検討が必要になります。
借入金額が多いと返済総額は多くなり、少なければ返済総額も少なくなります。借入金額を少なくすることで、その後の住宅ローンの負担は緩和されます。
ただし、借入金額を少なくするのは住宅ローンの借り換えではなく、後述する繰り上げ返済が中心的役割を果たします。
金利が高いと返済総額は多くなり、低ければ返済総額も少なくなります。金利の見直しは、住宅ローンの借り換えで対処することが可能です。
返済期間が長ければ返済総額は多くなり、短ければ返済総額も少なくなります。返済期間の短縮は、住宅ローンの借り換えと繰り上げ返済の両方で対処することが可能です。
⇒ 「借り換え」は、金利を低くする、返済期間を短くするのに効果的。
⇒ 「繰り上げ返済」は、借入金額を少なくする、返済期間を短くするのに効果的。
住宅ローン借り換えの目安
住宅ローンの借り換えをすることで、金利の低減化や返済期間の短縮化が図れることになります。
では、借り換えをして効果が出ると言われている目安はどのようなものでしょうか。
1 住宅ローンの借入残高が1000万円以上ある
2 借り換え後の金利が1%以上低くなる
3 住宅ローンの残存期間が10年以上ある
3要素がすべて揃っている方は、住宅ローンの借り換えを積極的に検討する価値があります。
もっとも昨今は低金利の状況が続いているので、借り換えで金利差1%求めるのは相当に難しいと思います。そうした場合は、上記1と3の状況を見て検討するのもありだと思います。
ただし、それ以上に注意をしておきたいことがあります。それは、住宅ローンは一般的に金融機関が窓口になっているということです。
今、住宅ローンを借りている銀行をA銀行。
借り換えを検討している銀行をB銀行とします。
住宅ローンの借り換えとは、B銀行から住宅ローン残高相当分を借り入れたうえで、そのお金をA銀行に返すという作業になります。
そして新たな契約でB銀行に借りたお金を返済するという流れです。
当然、そこには手間がかかっているので、さまざまな手数料が発生します。住宅ローンの借り換えで少しはお金の節約ができたとしても、手数料の負担が発生して思うような効果が見込めなかった。
借り換えの効果が見込める目安をご紹介しましたが、目安に該当したら検討はしたいところですが、絶対的な判断基準にはならないという点には注意が必要です。
住宅ローン繰り上げ返済の基本的なポイント
住宅ローンの借入金額を少なくする、返済期間を短くするのに効果的なのは「繰り上げ返済」です。
繰り上げ返済には、住宅ローンの元金部分の全部を返済する場合と、一部を返済する場合があります。
全部を返済すれば住宅ローンの問題そのものが消えますので、ここでは一部返済についての基本的なポイントをお伝えします。
一部返済(以下「繰り上げ返済」とします)は、住宅ローンの一部を返済するものですが2つのタイプがあります。
それは、期間短縮型と返済額軽減型です。
期間短縮型
期間短縮型は借り換えをしても、返済額は変えないというものです。
通常、借り換えをしたら金利も低くなります。返済額を変えなければ、金利の低下によって利息の支払いも少なくなるので、結果的に返済期間を短縮することが可能です。
返済額軽減型
期間短縮型は借り換えをしても、返済期間は変えないというものです。
通常、借り換えをしたら金利も低くなります。返済期間を変えなければ、金利の低下によって利息の支払いも少なくなるので、結果的にその都度の返済額を少なくすることが可能です。
期間短縮型と返済額軽減型の選択のポイント
期間短縮型と返済額軽減型を比較して、利息軽減効果が高いのは期間短縮型です。
期間短縮型 | 返済額軽減型 | |
毎月の支払額 | 変わらない | 少なくなる |
返済の期間 | 短くなる | 変わらない |
期間短縮型は、返済期間が短くなるのが最大の特徴です。返済期間が短くなれば、その間に発生する利息も少なくなります。
借り換えで総返済額を少なくしたい方は、期間短縮型がおすすめです。
もっとも家計の状況で月々の返済額を少なくしたい方もいるはずです。そうした方は、返済額軽減型も検討の余地はあると思います。
さいごに
私はファイナンシャルプランナーの資格取得講座の講師を務めてきました。その中には、住宅ローンの借り換えや繰り上げ返済の講義もあります。
また私自身、住宅ローンを抱えていた時期もあります。
私は20代中盤に建売住宅を購入しました。当時はバブルの直前で、しかも都心からは少し離れた場所なので価格は今とは比較にもなりませんが、それでも住宅ローンに頼らなければ購入できない状態でした。
その私がファイナンシャルプランナーの資格をとって最初に行ったのが繰り上げ返済です。
私には、ファイナンシャルプランナーとしての知識があり、実際の経験もあります。それでも、この記事でお伝えするのはあくまでも基本的な内容にすぎません。
住宅ローンの借り換えや繰り上げ返済を考えたとき、相手方となるのは金融機関の方であることが多いと思います。
金融機関の住宅ローン担当者は、少なくとも自社商品については精通しているはずですし、巧みなセールストークを駆使してきます。
もちろん金融機関が虚偽の説明をするとは思えません。
ただ、聞く方(借り換えや繰り上げ返済を考え方)にある程度の知識がないと、何を言われているかわからないまま、どのような効果があるのかわからないまま契約をしてしまうこともあります。
この記事で私が何よりもお伝えしたいのは、借り換えや繰り上げ返済は「説得」されて決めるのではなく「納得」して決めていただきたいということです。
金融機関の住宅ローン担当者のセールストークをしっかりと理解して、納得して新たな契約を行う。
住宅ローンは元々が高額である場合が多く、借り換えや繰り上げ返済も大きな効果が見込まれることも往々にしてあります。
何よりも納得することが大切と考え、借り換えや繰り上げ返済の基本的な部分に絞っていくつかのことをお伝えしました。
特に50代の方が老後のライフプランを考えるとき、住宅ローンが大きな問題になってくることも決して少なくはありません。
この記事が、少しでもそうした方の参考になれば幸いです。