「老後2000万円問題」を契機として、老後不安を訴える方が多くなっています。
実際「人生100年時代」で老後を長く過ごす方が多くなる一方、今後の公的年金は給付が抑制されていくので、仕方のないことかもしれません。
しかし手をこまねいているわけにもいきません。そこで、この記事では老後を迎えるまでに用意をしておきたい貯蓄の目安を、計算事例つきでお伝えすることにしました。
100人の方がいれば、そこには100通りのライフプランがあります。老後を迎えるまでの貯蓄の目安についても同じことはいえますが、ここでお示しすることが少しでも参考になれば幸いです。
目次
老後を迎えるまでの貯蓄の目安の計算式
まずは、老後を迎えるまでに用意をしておきたい貯蓄の計算式をお伝えします。
計算式そのものはとても簡単です。
老後に必要なお金(支出) – 老後に入ってくるお金(収入) = 老後を迎えるまでに用意をしておきたい貯蓄
老後に必要なお金(支出)
老後に必要なお金については、次の記事をご参考になさってください。
⇒ 老後資金はいくら必要なの?生活費と共にイベント費用も考えたい
老後に入ってくるお金(収入)
老後に入ってくるお金にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここで使う資料は、上でご紹介した「老後資金はいくら必要なの?生活費と共にイベント費用も考えたい」と同じく、総務省の「家計調査年報(家計収支編)」です。
家計調査年報は毎年公表されていますが、この記事では2018年(平成30年)の資料を使って老後に入ってくるお金(収入)をご紹介します。
高齢夫婦無職世帯の収入(1か月当たり)
統計では、夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯を高齢夫婦無職世帯としています。
高齢夫婦無職世帯の1か月当たりの収入は222,834円で、内訳は次のとおりです。
高齢夫婦無職世帯の1か月当たりの収入
社会保障給付 | 203,824円 |
---|---|
その他の収入 | 19,010円 |
合計 | 222,834円 |
高齢単身無職世帯の収入(1か月当たり)
この統計では、60歳以上の単身無職世帯を高齢単身無職世帯としています。
高齢単身無職世帯の1か月当たりの収入は123,325円で、内訳は次のとおりです。
高齢単身無職世帯の1か月当たりの収入
社会保障給付 | 115,059円 |
---|---|
その他の収入 | 8,266円 |
合計 | 123,325円 |
老後に入ってくるお金(収入)【計算例】
「高齢夫婦無職世帯の収入(1か月当たり)」と「高齢単身無職世帯の収入(1か月当たり)」をご紹介しました。
では、老後に入ってくるお金(収入)の合計は、どの程度になるのでしょうか。
ここでは、老後の期間を15年、20年、25年、30年として計算をしてみたいと思います。
計算例1 高齢夫婦無職世帯の老後の収入
老後の期間 | 夫の年齢 | 妻の年齢 | 老後収入の合計 |
15年 | 80歳 | 75歳 | 4005万円 |
20年 | 85歳 | 80歳 | 5340万円 |
25年 | 90歳 | 85歳 | 6675万円 |
30年 | 95歳 | 90歳 | 8010万円 |
※ 便宜上、夫の年齢65歳・妻の年齢60歳をスタートにしています。
※ 1年の収入は267万円で計算をしています。(1ヶ月当たりの収入222,834円×12月=2,674,008円≒267万円)
計算例2 高齢単身無職世帯の老後の収入
老後の期間 | 年齢 | 老後収入の合計 |
15年 | 80歳 | 2205万円 |
20年 | 85歳 | 2940万円 |
25年 | 90歳 | 3675万円 |
30年 | 95歳 | 4410万円 |
※ 便宜上、65歳をスタートにしています。
※ 1年の収入は147万円で計算をしています。(1ヶ月当たりの収入123,325円×12月=1,479,900円≒147万円)
計算例3 夫婦2人→1人の収入
最後に老後生活のスタートは夫婦2人であったが、その後1人で生活するようになった場合の収入の計算例をお伝えします。
例 夫婦2人の期間20年、一人の生活が10年であった場合
夫婦2人の期間20年の収入 | 267万円×20年=5340万円 |
1人の期間10年の収入 | 147万円×10年=1470万円 |
老後収入の合計 | 6810万円 |
老後を迎えるまでに用意したい貯蓄の目安【計算例】
お金の面から老後生活を考えていくとき、収入と支出がどの程度になるのかを推計しておくことは大切です。
その結果で、老後を迎えるまでに用意しておきたい貯蓄の目安を知ることができます。
老後を迎えるまでに用意をしておきたい貯蓄の計算式は
老後に必要なお金(支出) – 老後に入ってくるお金(収入) = 老後を迎えるまでに用意をしておきたい貯蓄
です。
この計算式で、老後を迎えるまでに用意をしておきたい貯蓄の数値が「マイナス」であれば、支出よりも収入が多いことになります。
老後支出より老後収入が多ければ、老後を迎えるまでに用意をしておきたい貯蓄が「0円」であっても老後生活を送ることができます。
一方、老後を迎えるまでに用意をしておきたい貯蓄の数値が「プラス」であれば、収入よりも支出が多いことになります。
老後収入より老後支出が多いのであれば、老後を迎えるまでに用意をしておきたい貯蓄が必要ということになります。
それでは、老後を迎えるまでに用意したい貯蓄の計算例を3つご紹介します。
なお、計算例で使う数字について、収入はこの記事でご紹介した数字を、支出は「老後資金はいくら必要なの?生活費と共にイベント費用も考えたい」を使います。
⇒ 老後資金はいくら必要なの?生活費と共にイベント費用も考えたい
では、老後を迎えるまでに用意したい貯蓄の目安はどの程度になるのでしょうか。ここでは、老後の期間を15年、20年、25年、30年として計算をしてみます。
計算例1 高齢夫婦無職世帯が老後を迎えるまでに用意したい貯蓄の目安
老後の期間 | 支出合計 | 収入合計 | 用意したい貯蓄額 |
15年 | 4770万円 | 4005万円 | 765万円 |
20年 | 6360万円 | 5340万円 | 1020万円 |
25年 | 7950万円 | 6675万円 | 1275万円 |
30年 | 9540万円 | 8010万円 | 1530万円 |
計算例2 高齢単身無職世帯が老後を迎えるまでに用意したい貯蓄の目安
老後の期間 | 支出合計 | 収入合計 | 用意したい貯蓄額 |
15年 | 2925万円 | 2205万円 | 720万円 |
20年 | 3900万円 | 2940万円 | 960万円 |
25年 | 4875万円 | 3675万円 | 1200万円 |
30年 | 5850万円 | 4410万円 | 1440万円 |
計算例3 夫婦2人→1人の老後を迎えるまでに用意したい貯蓄の目安
最後に老後生活のスタートは夫婦2人であったが、その後1人で生活するようになった場合の生活費の計算例をお伝えします。
例 夫婦2人の期間20年、一人の生活が10年であった場合
老後の期間 | 支出合計 | 収入合計 | 用意したい貯蓄額 |
夫婦2人の期間20年 | 6360万円 | 5340万円 | 1020万円 |
1人の期間10年 | 1950万円 | 1470万円 | 480万円 |
合計 | 8310万円 | 6810万円 | 1500万円 |
老後を迎えるまでに用意したい貯蓄の目安【まとめ】
老後を迎えるまでに用意したい貯蓄額の計算は、
「老後に必要なお金(支出) - 老後に入ってくるお金(収入)」
で求めることができます。
計算式は簡単ですが、それぞれに入れる金額については様々なアプローチ方法があり、必ずしも簡単にいかない場合もあります。
この記事では総務省の「家計調査年報(家計収支編)」だけを使い、老後を迎えるまでに用意しておきたい貯蓄の目安を求めてきました。
この記事でお伝えしたのは統計資料の平均値です。
しかし実際の支出や収入は一人一人で内訳も金額も異なってくるはずで、むしろ平均値に近い方は案外と少ないのではないでしょうか。
ただ、老後を迎えるまでに用意したい貯蓄額は目安でも算出しておきたいところです。
繰り返しになりますが、老後の支出額は
⇒ 老後資金はいくら必要なの?生活費と共にイベント費用も考えたい
でご案内し、計算の方法も記事の中に記載しています。
また、老後に入ってくるお金(収入)については、この記事で内訳をお伝えしています。
収入について記事で記載をしたのは、社会保障給付とその他の収入の2つだけですが、これ以外に収入のある方は、その金額も含めていただければ、よりご自身にあった金額が算出できるはずです。
なお、収入については総務省の統計とは別に、次のような項目で分類することもありますのでご紹介をしておきます。
公的年金
企業年金
個人年金
就労による収入
その他の収入
あとは老後の期間を設定するだけです。
単身の方はご自身だけの老後の期間を考えれば計算できます。ご夫婦の場合は夫婦2人の期間と1人だけの期間を考えることで計算ができます。
この記事では、数字ばかりでわかりにくかった面があるかもしれません。
ただ、老後を迎えるまでに用意したい貯蓄の目安を知るためのアプローチとしては、もっとも単純な計算式だと思います。
あくまでも目安なので実際とは誤差が生じることもありますが、それでも試す価値は十分にあります。
お時間のある時にでも、ぜひ一度、チャレンジなさってみてください。
まとめ
「人生100年時代」で老後を長く過ごす方が多くなる一方で、今後の公的年金は給付が抑制されていく見込みです。
また「老後2000万円問題」を契機として、老後不安を訴える方が多くなっています。
そこでこの記事では、老後を迎えるまでに用意をしておきたい貯蓄の目安についてお伝えしてきました。
老後の支出と収入を比較すると、通常は支出が多くなります。
老後は公的年金などの収入に頼りながらも、それまでに蓄えてきた預貯金などを取り崩す時期になります。
そのために、老後を迎えるまでに用意をしておきたい貯蓄の目安を知ることはとても大切です。
実際のところ、老後を迎えるまでに用意をしておきたい貯蓄額が5000万円とか1億円とか、そんな数字になることは滅多にありません。
一人一人のライフプランは異なるので、老後を迎えるまでに用意をしておきたい貯蓄額の目安も様々だとは思いますが、予想の範囲に入る場合も多いと思います。
どのような方法でも構わないので、ぜひ、老後を迎えるまでに用意をしておきたい貯蓄額の目安をつかんでおいてください。