厚生年金保険の保険料算出の要素の一つになっているのが標準報酬月額です。
従来、厚生年金の標準報酬月額の上限は62万円でしたが、2020年(令和2年)9月1日以降、65万円に引き上げられることになりました。
この記事では、標準報酬月額上限引き上げのルールなどについて簡単にお伝えしていきます。
標準報酬月額上限引き上げのルール
長い歴史がある厚生年金保険の標準報酬月額上限引き上げのルールは、これまでも何回か見直しが行われています。
現在のルールは平成16年に行われた、いわゆる「年金法の大改正」に基づくもので、この中ではその後の厚生年金保険料率の引き上げのルールが法定化されています。
法定化された厚生年金保険料率の引き上げのルールでは、標準報酬月額上限引き上げの考え方を法律で規定するとともに、具体的な引き上げは政令で行うことが可能になっています。
では、実際の引き上げのルールはどのようになっているのでしょうか。
厚生年金保険法によれば「毎年3月31日における全被保険者の標準報酬月額の平均の2倍に相当する額が標準報酬月額の最高等級を超え、その状態が継続すると認められるときは、政令により、その年の9月1日から上限を引き上げることができると規定しています。
2020年9月1日以降の厚生年金の標準報酬月額上限の引き上げ
前述のルールに合わせて実際を見ると、平成27年度の年度末から標準報酬月額の平均の2倍に相当する額が、従来の厚生年金の標準報酬月額の最高等級である「62万円」を超えている状況が続いています。
そのため、「第31等級 62万円」に加えて、2020年9月1日より「第32等級 65万円」が加えられることになりました。
報酬月額の幅についてみていくと「第31等級 62万円」に該当するのは、報酬月額が60万5千円以上でした。
2020年9月1日以降は、「第31等級 62万円」に該当するのは報酬月額が60万5千円以上63万5千円未満、「第32等級 65万円」に該当するのは63万5千円以上になります。
まとめ
この記事では、標準報酬月額上限引き上げのルールなどについてお伝えしてきましたが、最後にいくつかのことを付け加えておきたいと思います。
まず、現在の標準報酬月額上限引き上げのルールは平成16年の年金法の大改正によって法定化されたものですが、実際に引き上げられるのは法定化後初めてです。
2020年9月1日以降、厚生年金の標準報酬月額上限引き上げが行われるものの、引き上げ自体は頻繁に行われるものではないと考えられます。
次に厚生年金保険料今回引き上げが行われるのは標準報酬月額だけで、標準賞与額・保険料率は従来のままです。
また、健康保険の保険料のの元になる要素としては、厚生年金と同じく標準報酬月額・標準賞与額・保険料率がありますが、こちらについての変更はありません。
なお、この記事では厚生年金保険の標準報酬月額上限引き上げのルールなどについてお伝えしてきましたが、国家公務員や地方公務員などについても同様の見直しが行われています。
標準報酬月額上限 | 標準賞与額上限 | |
厚生年金 | 62万円(31等級) ⇒ 65万円(32等級) | 1ヶ月当たり150万円 |
健康保険(協会けんぽ) | 139万円(50等級) | 年度累計額573万円 |